リュック・ベッソンの「ニキータ」を私が評価しているのは、アンヌ・パリローにデザートイーグルを持たせたからである。
普通なら、女性が使う銃であれば小型の銃、口径も9ミリ以下のものだろう。映画のあのシチュエーションを考えても、せいぜい9ミリのダブルカラムである。しかし、ベッソンはあろうことか、彼女にデザートイーグルを持たせた。ストッピングパワーは45口径でも充分なのに、有り余る50口径をバカスカ撃ちまくる。私はあのシーンに度肝を抜かれた。
それは、ニキータという少女の強さの表れであった。これからスパイとして生きていくには、様々な苦難を乗り越えていかなければならない。加えて、過去の払拭という意味もあっただろう。あのシーンで彼女にデザートイーグルを持たせたのは、ベッソンの完璧な演出であった。以来私は、彼の映画のガンアクションに注目している。
ハリウッドが「ニキータ」をリメイクした「アサシン」という映画がある。この映画のニキータはそのシーンで何を使ったか。ウィルディである。しかも、確かエングレーブまで刻まれていたと思う。そのセンスのなさに私はあんぐりと口が開いた。この節操のなさ。ハリウッドもここまで地に墜ちるとは。
女性と大口径銃は、一見合わない感じがするが、演出によっては抜群の効果を得ることができる。女性の地位も力も、男に勝るとも劣らなくなった昨今、女刑事が500マグナムを撃つ日が来るのだろうか。来そうな、気がする。