2002年のM-1で決勝に出てきたとき、はっきりいってノーマークだった。名前さえ知らなかった。大阪人は、見たことのない芸人については厳しい。評価はマイナスから始まるのだ。しかし、笑い飯は違った。それはすぐにプラスになり、及第点をあっさり超えて、あっという間に最高評価に到達した。
笑い飯を語るとき、まずそのスタイルに注目が集まる。漫才は基本的にボケとツッコミという役割分担をすることによってネタを運んでいくが、笑い飯は互いの立場を固定せず、ボケとツッコミを繰り返し続けるという特異なスタイルである。
オール阪神巨人ややすきよなども、たまにボケとツッコミが替わるときがあるが、それは一時的なネタの流れに過ぎず、笑い飯のように常に入れ替わるスタイルは、恐らく過去にも例がないと思う。しかし、笑い飯の漫才はスタイルから始まったわけではないだろう。あのネタありきで、あのスタイルになっただと思う。
ツカミこそ普通の漫才のように始まるが、場が温まった頃合いを計って交互にポジションを替え、ネタが進むごとにそれはスピードを増す。まさにツインエンジン漫才である。何気なくやっているようで、間の取り方やネタの運び方などには細心の注意が払われ、そして何より、ほんの僅かでも噛んだりすると、あのネタは終わりである。スピーディなネタには、確実な喋りが不可欠なのである。
学業成績は優秀な二人だが、見た目には一切それを感じさせない。だが、何も考えていないような風貌に騙されてはいけない。彼らの頭の中では、凄まじいスピードで笑いという名のターボチャージャーが唸りを上げているのだから。
今年のM-1は、ほぼ間違いない。