往年の日活アクション映画などでは、撃っても撃っても弾の減らない銃がよく出てくる。銃に関して無知なはずはないだろうが、たぶんそんなことはどうでもよかったんだろう。
アメリカなどでは実銃を改造して劇中で使用するので、動作はもちろん実銃と同じだが、日本はまったくのスクラッチビルドになるため、多少の嘘は目を瞑らなければならない。オートマチックが撃ってもスライドしなかったり、薬莢が出なかったり、場合によってはモデルガンをそのまま使うこともあり、バレルのインサートが見えていた、なんてこともある。
かといって、海外で実銃を使って撮ったからリアルかと言えばそうでもない。ハンディキャップをカバーするのも演出の仕事である。カット割りやカメラワークでどうにでもなるのだ。
弾着は、ガンアクションでは難しい部類になる。こればっかりは、いくらハリウッドでも実際にやるわけにはいかない。今でこそCGでどうにでもなるが、主流はやはり火薬弾着であろう。
やったことがないのであまり詳しくはわからないが、つまりは火薬の爆発力で血糊の袋を吹き飛ばしてそれらしく見せるのである。実は、これは大嘘になる。それもそのはず、弾が入った場所が吹き飛ぶわけはない。吹き飛ぶとすれば、むしろ貫通した側である。更に、点火時の火花が見えてしまうことがある。お前はロボットか。
音響との兼ね合いも難しい。音がするのは銃から銃弾が発射されたときであって、人間に弾着したときには破裂音が出るはずはない。だからロボットちゃうっちゅうに。
こういう嘘がまかり通る背景には、銃についての無知がある。日本では当たり前の話だ。たぶん誰一人として人が銃で撃たれた瞬間などお目にはかかれないだろう。よく考えればおかしいことがわかるが、ぶっちゃけ、それっぽく見えれば細かいことはどうでもいいということになる。
意外な話だが、マイアミバイスにはほとんど弾着シーンがない。予算や手間の関係があるのかもしれないが、それでもあれくらいの名作品ができあがるのだ。
ついでにもう一つ、ガンダムの1話でザクがマシンガンを発射するシーンがある。そばで観ていたアムロの近くに薬莢ががらがらと落ちてくるわけだが、あれだけ科学が発達した未来なのだから、無薬莢弾の開発が進んでいてもいいようなものだ。特に戦争ともなれば、無用な物資の消費は避けねばならない。ではなぜ薬莢が出るのか。答えはそのほうがらしいからである。
嘘も方便。それが演出というものだ。