バックナンバーズ・いい大人になろうと思う

知り合いの女の子から、コンパニオンの仕事を始めたのでプロフィール用の写真を撮ってくれないかと話がきた。軽い気持ちで受けたが、直前になってそれがかなり重要な写真であることがわかって、私は正直ビビった。
隠さずに言おう、下心はあった。ああ、あったさ(開き直るな)。しかし、それを聞いてから、こいつは真剣にやらないと彼女のために悪いなと思った。もしかすると、私の写真が彼女の運命を左右してしまうかもしれないのだ。
そんな歳になったのかと、思った。そんな責任を負えるのかと、自分に問うた。ほんの一瞬だが、断ろうかとも思った。
撮影当日、ファインダーの中の彼女は、明るくてかわいかった。予算も省みず、四本のフィルムが回った。寒風吹きすさぶ中、三ヵ所のロケ地を移動したが、私の早足に彼女はついてきてくれた。
たった二枚の写真のために、私も彼女も、持てる力を全て出そうとしていた。結果がどうでるかはわからないが、フィルム代の封筒に同封されていたメッセージカードを見て、私は思った。彼女のためにも、いい大人になろうと。
(みかつう9802号)