守口での独り暮らしは10年続いたが、4年目あたりから毎朝パスタを食べていた。パスタといってもただのスパゲティである。タイトルで少し気取ってみたが、別に意味はない。
食パンは確か一袋200円くらいしていたが、あるとき、パスタ2kgが200円で売っていた。一日分200gとして十日分。ひょっとしたらパスタの方がコストパフォーマンスが安いんじゃないかと思い、食材を揃えてみた。ミートソースはたまに1缶140円くらいで安売りしているし、茹でるのに時間はかかるが、そんなに日々が忙しいわけではない。その日から、私の朝食はパスタになった。
そのうち、オリーブオイルで炒めてみようということになった。適当なものを買ってきたところ、癖が強すぎてまずかったので、イタリアの本場っぽいものを買ってみた。だんだん知識が増えてくると、エキストラバージンというのが一番いいとわかった。最終的には、食パンの方が安かったかもしれない。
ミートソースは、メーカーによって味の差異があり、ママーが一番うまかった。たまにシチューの粉末でカルボナーラらしきものをつくったりしてみた。キッチンタイマーやパスタケースも揃え、確かにパスタモーニングという感じはあったかもしれない。
結局、6年以上に渡って朝食はミートソーススパゲティだった。そんなに毎日で飽きないかと思われるだろうが、これが飽きない。日本人が毎日ご飯で飽きないように、パスタも飽きないようになっているのだ。
実家に戻ってからは、ぱったりと食べなくなった。やはり家の台所は母のものであり、私の付け入る隙はない。電子レンジでパスタがつくれるという容器もあるが、どうも試す気にはなれない。
たぶん朝食にパスタを茹でるという行為そのものに、私は独り暮らしの意味を見いだそうとしていたのかもしれない。
電子レンジでパスタができる http://www.kureha.co.jp/living/02kk/index26.html