我が家は狭いので風呂がない。故に銭湯である。この辺は、京都の繁華街に近い割に古い小さい家が密集していて、半径100mに3つも銭湯があったりする。今日、そのうちの一つが廃業した。
いつも行っている銭湯ではなく、その銭湯が休みのときに行くところだが、小さいころからずっと通っている銭湯には違いない。
水曜日、いつも行っている銭湯は営業しているが、さすがに最後なので入りに行った。
銭湯へ行くということは、私にとって何ら特別なことではない。みなさんが家で風呂に入るように、私も銭湯へ行く。ごく普通で当たり前のことだ。
湯船に浸かり、身体を洗う。このお風呂屋さんはお湯が熱い。が、冬場はよく温まる。京都は今日も寒かった。
近所のおっちゃんが入ってきて、挨拶をする。「散髪したんか?」私はえへへと笑う。
脱衣場で濡れた身体を拭き、服を着る。「今日来てくれたんやね」番台のおばちゃんが声をかけてくれた。
脱衣かごを片付けて、洗面器を持って、ゴム草履を履く。「すんませんね、ありがとう」
私は、こみ上げるものをこらえて暖簾をくぐった。今日で、この銭湯は廃業になる。来週から、ちょっとだけ遠い銭湯に行くことになる。
潤んだ目に、冷たい西風が凍みた。