帰りのタクシーにて

いろいろケチのついた東京行だったが、最後の最後までそうだった。
急いで帰って風呂に行きたかったので、生まれて初めて自腹でタクシーに乗った。新幹線を降り、荷物を抱えてタクシー乗り場に向かった。
あまり順番待ちすることなく、タクシーはやってきた。大きいほうの鞄を車内に入れようとすると、運転手が迷惑そうな顔で制止してきて、後ろを指差した。トランクに詰めと言うのだ。
少しでも急ぎたかったのだが、私は指示に従った。確かに、その鞄は後ろのシートに置くには大きかったようだ。
車なら二十分くらいで着くだろう。このくらいの時間なら銭湯もまだ開いている。
繁華街近くに差し掛かり、信号で停まった。信号の代わり端、1台斜め前の左車線のRV車がいきなり右へUターンをし始めた。
信号の代わり端だったので、当然前の二台は接触、ガシャンという鈍い音が聞こえた。
私と運転手は、無茶しよんなー、と思わず声に出した。
もしちょっとでもアクセルを踏んでいたら、ちょっとでもブレーキが遅かったら、この車がぶつかっていたかもしれない。
「気をつけてくださいね、ほんまに」はあ、やっと帰ってきた。さあ風呂だ。

東京雑感

東京に行って、何を一番感じたかと言えば、なんて携帯は便利なんだとw
GPS機能があるからカーナビ代わりになるし、もちろん歩いているときでもすぐに地図が出るし、ワンセグついてるからテレビは見られるし、FMも聴けるし、写真もムービーも撮れるし、もちろん電話もできるし。
こうやって家にいるときはPCがあるので携帯はおねむだが、外へ出るときはやはり携帯端末のようなものは必要かもしれない。電話の形でなければもっといいのだが。
今回、東京に行ってわかったことは、車で行っても意外と疲れないし安くつく、首都高から見える夜景はテンション上がる、新大久保は肌に合う、秋葉原にオタクは歩いていない、コインロッカーのサイズはみないっしょ、地下鉄の初乗りは激安(ていうか大阪高杉)、帰りの新幹線もうちょっとで乗り過ごすとこやった、てなところだろうか。
東京は広い。人も多い。生活して仕事したいとは思わないが、一ヶ月くらいべたーっといても面白いと思う。
東京、そのうちまた。

東京はうまかった

仕事が忙しいと楽しみは食べることくらいしかないわけで、当然こちらはごちそうしてもらう身なのでどんなものをいただけるのだろうと思って多少不安になっていたが、それはまったくの徒労だった。
新宿の仕事で、まず連れて行ってもらったのがねぎしという炭火焼の店だ。牛と豚を味噌やタレで焼いたものに、テールスープ、とろろと麦飯がついた定食、しめて1200円前後なのだが、うまい。特に豚肉がうまい。疲れた身体に栄養面でも満点だ。
次の日は、豚珍館というとんかつ屋に入った。
店は二階にあって、和風旅館の座敷のような佇まいで少々狭苦しい。人のよさそうな女将さんが店を仕切っていて、客の座席は女将さんの権限である。
どこにでもあるとんかつ屋と思っていたが、注文して五分と経たずに品がやってきた。メインのカツに、ごはんと豚汁、この豚汁が激ウマである。
カツが実にやわらかい。すっかり歯の弱ったうちのおとんもこれなら大丈夫だ。同席している者皆絶賛である。
そして安い。このボリュームでこの値段、東京の飯は高かろうまずかろうと思っていたがとんでもない。探せばこういう店もあるのだ。
新大久保の王将に入ったときもそうだ。王将に行くと必ず回鍋肉を頼むのだが、ここの回鍋肉はしっかりと辛味が効いていて、甘味噌とのバランスが絶妙だった。
恐らく、新大久保という土地がこの味を作り出しているのだろう。国道沿いのファミレスのような王将ではこうはいかない。
唯一惜しむらくは、あれだけ食べたかった芋ようかんが買えなかったことだ。ああ、食いたかった・・・

荒木経惟「東京人生」

昼食を済ませ、両国の駅をぐるっと回り込んで、国技館の屋根を眺めながら、江戸東京博物館へと足を向けた。
絵画は写真より本物を美術館で見たほうが断然いいのだろうが、写真家の写真はどうなんだろう。写真なんだから写真集で見るべきなんだろうか、それとも印刷より印画紙に焼き付けた現像写真で見るべきなのだろうか。
どっちにしろ、初めて目にするアラーキーの写真である。
私は、アラーキーの風景写真が好きだ。何気ない路地を切り取った写真にも、計算された構図があり、感覚でしか捉えることのできない何かが絶対的に存在している。
展示室前には、子供たちの無邪気な姿が大きなパネルで立てかけられている。「さっちん」からのショットだろう。
年代順に並べられた写真は、まさに東京という都市の人生である。老夫婦が懐かしみながら写真を見ている。これはここだ、あれはそこだ、とか。そんな声をよそに、私は写真を一枚一枚、血を吸うように見つめていった。
踏まれてぺちゃんこになったコーラの缶の写真を見たとき、ちょっとゾッとした。昔、道路でぺちゃんこになったトースターを見て、こういうのを集めたら面白いかなと思ったことがあったのだ。
写真を見ていくにつれ、東京という都市の人生の中に、荒木経惟という写真家の人生が写し出されていく。
忙しかった東京での時間の中で、最も充実した一時だったような気がする。


アラーキー風に頑張ってみたw

突撃!東京の昼ごはん

まだまだやるぞw
東京タワーから両国の江戸東京博物館へ向かう。大江戸線でぐるっと7時から3時方向へ(うまいw)、地下鉄の駅を降りて、近くのJR両国駅を目指す。駅前なら何か食うところがあるはずだ。
線路沿いにてくてく歩くと、ハンバーグ屋さんがあった。表の立て看板、チキンカツとハンバーグにぐっときて入った。加真呂という名だ。
がっつり食いたかったので定食を注文する。サラリーマンのランチタイムが終わったせいか、店内に客は私一人だ。
10分くらいして、熱く焼けた鉄板皿に乗ったハンバーグとチキンカツが出てきた。玉ねぎとわかめの入った味噌汁がうまい。一口つけてからおろししょうゆのソースをかける。チキンカツにもかけてしまったがまあいい。
カツは衣がざくっという感じで固めだがうまい。ハンバーグも肉肉しい感じだ。
東京は高かろうまずかろうと思っていたが、このボリュームで千円なら納得だ。ごっつぁんですってな感じで店を出た。そう、ここは両国高架下。
061205

実相寺昭雄

高校生の頃、深夜に放送していた「怪奇大作戦」を観ていて、格段に演出が異なる作品に気づいた。
極端なクロースアップ、緻密に計算されたレイアウト、ダイナミックな視点移動、光と影の印象的なカット。タルコフスキーに傾倒していた私が、実相寺昭雄という映像にはまるのに時間は刹那も必要なかった。
特撮からアダルトまで、氏の映像はどのジャンルでも変わらず私を魅了し続けた。タルコフスキーと並んで、最も影響を受けた映像作家の一人と言えよう。
出張先の東京、何気なく見た新聞に、氏の訃報が載っていた。せめて同じ空気の中で、その死を見届けたような気がした。
次は、私がその映像の遺伝子を残す番だと、思っている。