仕事が忙しいと楽しみは食べることくらいしかないわけで、当然こちらはごちそうしてもらう身なのでどんなものをいただけるのだろうと思って多少不安になっていたが、それはまったくの徒労だった。
新宿の仕事で、まず連れて行ってもらったのがねぎしという炭火焼の店だ。牛と豚を味噌やタレで焼いたものに、テールスープ、とろろと麦飯がついた定食、しめて1200円前後なのだが、うまい。特に豚肉がうまい。疲れた身体に栄養面でも満点だ。
次の日は、豚珍館というとんかつ屋に入った。
店は二階にあって、和風旅館の座敷のような佇まいで少々狭苦しい。人のよさそうな女将さんが店を仕切っていて、客の座席は女将さんの権限である。
どこにでもあるとんかつ屋と思っていたが、注文して五分と経たずに品がやってきた。メインのカツに、ごはんと豚汁、この豚汁が激ウマである。
カツが実にやわらかい。すっかり歯の弱ったうちのおとんもこれなら大丈夫だ。同席している者皆絶賛である。
そして安い。このボリュームでこの値段、東京の飯は高かろうまずかろうと思っていたがとんでもない。探せばこういう店もあるのだ。
新大久保の王将に入ったときもそうだ。王将に行くと必ず回鍋肉を頼むのだが、ここの回鍋肉はしっかりと辛味が効いていて、甘味噌とのバランスが絶妙だった。
恐らく、新大久保という土地がこの味を作り出しているのだろう。国道沿いのファミレスのような王将ではこうはいかない。
唯一惜しむらくは、あれだけ食べたかった芋ようかんが買えなかったことだ。ああ、食いたかった・・・