イッセー尾形のとまらない生活2006秋の新ネタin京都

席に当たり外れがあるように、客にも当たり外れがある。席がいいときは決まって客が外れる。
私は一人芝居という演劇を観に来ているつもりだが、客の中にはお笑いを観に来ているつもりの客もいる。つまり、笑いに来ているわけである。
笑いに来ている客は、笑いの体勢ができているので、ちょっとのことでも声を出して笑ってしまう。まあみんなが笑うのは仕方ないが、一人だけ外れたところで大笑いする客がいる。これは非常に気になる。
我慢するなとは言わないが、台詞が聞こえなくなるほどの声は出さないでほしいものだ。できれば我慢してくれ。

「説明会」
往年のネタである。教習所かなんかの説明会会場、マイクを持った教官らしき男が場を牛耳る。小さな世界を仕切る優越感に浸る男のおかしみを描く。ビデオで何度も観た懐かしいネタだ。
「医者の改築」
懐かしいネタが続く。家を改築している産婦人科医。建てている様子を見に来るが、設計と違う箇所に気づき、現場の大工に言い寄る。医者の年齢がちょっと上がったような声になった。作った声はやや違和感あり。
「出張先にて」
キャラメイクのときにもしやと思ったが、ネタは違った。キャラはあの「ヘイ!タクシー」のサラリーマンである。出張先で車が故障、ガソリンスタンドのオヤジに直してもらっている間の時間をシュールに描く。生で観たいな「ヘイ!タクシー」。
「元中華屋」
中華料理屋に入ってきたのは、隣で工事をしている解体屋の男。自分が実は元中華屋だと言って、身の上話をする。こういうブルーカラーはイッセーさん十八番。
「修学旅行」
京都へ修学旅行にきた広島の学生。駅で集合しているときにいろいろやらかす。客に迎合したネタは残らないよ、イッセーさん。
「弦楽四重奏」
音楽ネタでありながらなかなかプロットがよくできている秀作。保育園の謝恩会に呼ばれたチェロ奏者、しかし他のメンバーがまだ来ていないので、時間を持て余してついつい。
「ベランダライブ」
近年の傑作と誉れ高いネタ。ベランダで一人ギターを抱えて歌うサキちゃん。友達を見つけては声を掛けるが寂しくあしらわれる。歌ネタが二題続いたので、このネタのキャラメイクのときにイッセーさんが「挨拶なしでアンコール」と言っていた。

今年で25周年、最初の二題は私が高校生か大学生のときに観たものだが、未だに色褪せない。21世紀になって、世の中もだいぶ変わった。昔の世の中より、今のほうが面白くないと思えるのは、私だけだろうか。
しかしイッセー尾形は、まだまだとまらない。
Sept.29,2006 京都府立文化芸術会館