バックナンバーズ・雑誌と腕時計

以前、女の子と茶席で話していたときに時計の話になって、私が腕時計をしていない理由を尋ねられた。大学の時に買った腕時計が、ものの一月も経たないうちに止ってしまい、電池交換も面倒なのでそのままにしておいたら、別に不自由なく生活できたので、今更欲しいとも思わないし必要とも思わないと答えた。
彼女は、俯き加減で嘲るように笑っていた。
心理学上、かどうかは定かではないが、腕時計というのは自分の恋人に対する考え方を表しているそうだ。腕時計を必要と思わない私は、恋人を必要としていないということになる。きっぱり言っておくが、私は正常である。
これは別の友人から聞いたのだが、雑誌は友人に対する考え方だそうだ。私は、必要なものだけを買って、ずっと置いておくと答えた。これは当たっている。
経済的理由が行動を制限しているのは確かだ。ちょっと興味のあるものなんかは、そういった理由で後回しにしていることが多い。友人も多いと交際費もばかにはならない。こういった例えはなるほど言い得て妙である。
腕時計の話を聞いて以来、私はずっとそのことが頭から離れない。あの場では「そんなことないよ」と一笑したが、冷静に考えて今恋人が欲しいかと考えると、そんなに必死になって欲しいとは思わないのが正直なところだ。延いては、恋人とは自分にとってどういう存在でありえるのか考えたりもする。恋人は友人の延長なのか、友情の行き着く先が愛情なのか、愛は欲しいと思って手に入れるものなのか。
また、恋愛小説を書こうと思った。
(みかつう9705号)

焼そばまん

職場の近所にファミリーマートができた。十年目にしてやっとである。神戸限定で焼そばまんが売っていたので、焼そば好きの私としては捨て置くわけにもいかず、買ってみた。
一口かじると、今まで見たことないような極太のそばが出てきた。そばめしよろしく細かく刻んである。ソースは甘めで、そば以外の具は入ってるのだろうが食感としては感じなかった。せめてキャベツくらいはあるといいかもしれない。
値段は125円と少し高い。まずくはないが、買うならやはり肉まんのほうがいいので、たまに浮気する程度ならいいかもしれない。

ものまね考

ものまねと言えば、やはりフジであり、ものまね四天王である。どうも日テレやテレ東はうさんくさいというか、バッタもん的なイメージがあったが、コージー冨田と原口あきまさを輩出してからは一気にシェアを拡げた感がある。
先日、フジのものまね番組をながら観していたら、奇妙な現象に出くわした。ぐっさんこと、山口智充がなぎら健壱の歌まねをしたときである。ぐっさんの後にご本人が登場したのだが、そのご本人の歌声を聞いて客席から歓声が上がった。
つまり、誰も本人の歌声を知らないのだ。ぐっさんがものまねした後、本人の声を聞いて似てると思ったからこその歓声である。これは実に珍しい現象だ。と同時に、実に微妙な現象である。
以前、ビジーフォーがトリオ・ロス・パンチョスかなんかのものまねをしたときでも、たぶん客席の中で、いや視聴者の中でもオリジナルを知っているのはごく僅かだっただろう。それでも有無を言わさないというのは、やはりものまね師の力量である。
現在、ただ似ているというだけのものまねは既に限界である。ものまね対象の斬新さ新鮮さ、ネタ運びのうまさなどが要求される。松村邦洋が才能を持て余しているのもその辺の力不足によるものだ。
その中でも、コロンブスは今後台頭していきそうな感じがする。女性二人組のユニットで、YOUや磯野貴理子などものまね対象の新鮮さは抜群である。ものまね番組も一時期に比べると先細り感があるのは否めないが、がんばっていってほしい。
余談だが、コージー冨田と私は誕生日が同じである。

ルパン三世・カリオストロの城

何か一つだけ、好きなアニメ作品を挙げるとすると、ガンダムでもなく、ボトムズでもなく、劇場版パトレイバー2でもなく、攻殻機動隊S.A.Cでもなく、私はこの作品を挙げる。連続投稿すると2ちゃんで糾弾される某映画レビューサイトにも書いたが、十年二十年、五十年百年経っても、日本のどこかで鑑賞されている作品だと思う。
確かにガンダムは好きだし、ガンダムがなければ今の私の半分は構成されていないと思うが、作品としては実に不完全なものである。不完全であるから我々ファンが付け入る隙がいっぱいあり、そこへいろんな思い入れが重なって、未だに熱が冷めないのだろう。
カリ城は、作品としては完璧である。完璧であるから、我々が付け入る隙は全くない。ということは、我々は完全に一視聴者としてだけこの作品に接することができる。作品世界に没頭できるからこそ、時代を経て再視聴したとき、以前と自分の視点が変わっていたり、新たな発見ができたりする。
毎日観るとさすがに飽きると思う。だが、一年二年経つと、観たいなあという気持ちが沸いてくる。ルパンという人気作品のバイアスを考慮しても、この作品は日本アニメ界の最高傑作だと言えるだろう。
宮崎監督がどんな映画祭で賞を獲ろうが、時代を超えて鑑賞される作品はカリ城をおいて他にない。それは、22世紀になればわかるだろう。
ルパン三世・カリオストロの城

私のリスニングスタイル

iTunesは実にいい。自宅ではwinだが、職場ではmacを使っている。iTunesが出たとき、改めてパソコンはすごいなあと思ったものだ。今ではwin版も公開され、自宅でも使っている。
ウォークマンが嫌いである。外で音楽を聴くのもいいが、外には外の音がある。街の雑踏、鳥のさえずり、虫の声。音楽は家でゆっくりと聴く。
音質にはこだわらない。こだわってもしょうがない。昔、何かの本で、完璧な再生環境を追求するには、日本の土壌では不可能、みたいなことが書かれてあった。別に書かれてなくても、音質にはこだわらない。割れたりノイズがあるのはだめだけど。
ヘッドフォンをよく使う。というか、ヘッドフォンでしか聴かない。ワイヤレスならなおいい。これも何かに書いてあったが、山下達郎氏もヘッドフォンで音楽を聴いているらしい。別に彼のファンではないけれど。
自腹で買ったCDプレイヤーは、5連奏だ。ターレット式のトレイに、CDが5枚置ける。なぜそんなものを買ったかというと、シャッフルして聴きたかったからだ。お気に入りの女性ヴォーカル5枚とか、お気に入りのミュージシャン5枚とか、全然脈絡も何もない5枚とか。次に何がかかるかわからないドキドキ感がいい。そういう点でも、iTunesは実にいい。だから最近は、プレイヤーを使っていない。
CCCDは、やめてほしい。エイベックスレーベルのミュージシャンなど聴くこともないだろうが、他にも波及するので困る。著作権問題が深刻なのはわかるが、他にもきっといい方法があるはずである。
最近CDを買っていない。気に入った曲もないが、たぶん時代と合わないのだろう。昔はよかったと確かに思うが、今がまずいとは思わない。こういう時は、お気に入りの曲を聴きながら原稿でも書く。
だがこれだけは言わせて欲しい。音楽を自分の感性で捉えず、流行や風潮で聴くな。自分に合う音楽を一生かかって探す、この楽しみをどうか味わって欲しい。

春夏夏冬

暑い。彼岸もとっくに過ぎているのに、なぜ私はTシャツに短パンで汗をだらだらかいているのだろうか。
いつもなら気持ち悪いくらいに時期を合わせてくる彼岸花が、今年は十日以上前に咲いていた。そういえば、セミの初鳴きを聞いたのはまだ6月だった。
こうも異常気象が続くと、そのうち異常が正常になり、元の正常が異常になってしまい、なんのこっちゃわからなくなってくる。
日本は熱帯化しているそうだ。気候区分から見ても、その状況は顕著である。最近思うのだが、どうも秋が短くなっているような気がする。
朝晩が涼しくなり、日も短くなって、日中の気温が下がり、Tシャツに1枚羽織り、短パンからジーパンになり、鍋物やおでんが恋しくなり、コンビニで肉まんを買い食いする。
本来、こんな感じで夏が秋へスライドするのだが、近年は昨日まで夏日だったのが今日はいきなり雪が降りそうな(ちょっとオーバーか)気候になったりして、季節と季節の間がなくなってきている。
このままでは、四季の移ろいに物の憐れや機微を感じていた、日本人の根幹が揺らいでしまうのではないかという危機感さえ抱く。
もっとも、世界中で四季を感じて生活している人種のほうが少ないと思うが、だからこそ、そういう感性を大事にしていかねばと思うのである。

カウボーイビバップ

オープニングを観て、私は確信した。これはすごい作品になると。私にとっても、アニメ界にとっても、である。
一話完結のスタイルは、プロットに程よいテンポを与え、軽妙洒脱なセリフと切れのいいアクションが華を添える。キャラクターも細部まで作り込まれていて、決して難解でない適度な伏線も随所に張られている。
声優陣も素晴らしい。特にスパイク役の山寺宏一は、三枚目の外見とは裏腹に、男の私が聞いてもセクシーでかっこいい声を持っている。スパイクと山ちゃんがイコールだとわかったとき、正直いろんな意味でショックだった。今では洋画の吹き替えも多数こなし、第一線での活躍が目覚しい。
久々に出てきたハイクオリティのアニメだったが、唯一惜しむらくは映画である。劇場用作品がもっと盛り上がっていれば、ビバップは今でも熱く語られていたはずだ。
ビバップのアイデンティティでもあるストーリーのテンポが、劇場用の尺で間延びしてしまい、ビート感が全く欠けていたのだ。オムニバスでもよかったかもしれない。
だが、テレビシリーズ全26話の完成度は非常に高く、筆舌に尽くし難い。未見の方はネットでも視聴できるのでぜひ。「へヴィメタルクイーン」「ガニメデ慕情」「道化師の鎮魂歌」あたりが私のオススメである。
カウボーイビバップ