彼が舞台に出てきた瞬間、観客と視聴者のほとんどは、あれ?と思ったはずだ。あの耳慣れたBGMが聞こえてこない。いつもは斜に構えてうつむき加減の彼が、胸を張って正面を見ている。
こんな大舞台で新ネタかけるか、普通。
百歩譲ってその度胸は褒めよう。しかし、確実な結果が要求されるコンテストで、新ネタをかけるというのは暴挙に等しい。おまけにその反応を察知したのか、一発目のネタで噛む始末。その瞬間、私は終ったと思った。
審査員の伊東四朗氏もおっしゃっていたが、みんなあの「ヒロシです」を待っていた。確かに新ネタは期待していたが、スタイルまで新ネタにすることはなかったはずだ。
マンネリを怖がるのはわかる。だが、みんなはまだ飽きる程君を見ていない。君が思う程、あのスタイルはまだ定着していないのだ。
仮に客が飽きたとして、それでも客は「ヒロシです」の一言を待っている。ダンディ坂野が幾ら飽きられても、彼が「ゲッツ」をやらない舞台はない。テツandトモが幾ら飽きられても、そのネタから「なんでだろう」が消えるはずはない。チャンバラトリオがハリセンを捨てないように、横山ホットブラザーズがノコギリを捨てないように(たまにやらん舞台あるけどね)、君はずっと「ヒロシです」を言い続けなければならないのだ。
それがヒロシという芸人なのである。もっともっと頑張れ。