新人コンビ

いつものように通勤の電車に乗る。乗るのは最後尾か先頭。先頭車両に乗ってうとうと発車待ちをしていると、運転室のほうで声がした。発車前の点検をしているようだ。だが声がやたらでかい。叫んでいるようだ。たぶん新人運転士だろう。そばに補佐役の運転士もいる。
いろんなところを点検しまくっている。普段はほとんど聞こえないが、そんなに点検箇所があるのか。
そのうち、車掌のアナウンスが流れた。あの独特の抑揚がなく、ジャニーズの若手アイドルのような声だ。おいおい、車掌も新人かよ。
新人コンビの特急は、定刻に駅を出た。
最初の停車駅を過ぎると、次の駅まで高加速区間だ。いつもは一眠りするのだが、どうにも落ち着かない。
スピードが増す。ゴーゴーと鉄輪を軋ませて、新人コンビの特急が疾走する。ちょっとくらいオーバーランしてもええから、脱線だけはやめてくれよ。
特急は慎重に減速して、駅に着いた。車掌の声が変わった。新人コンビはここまでのようだ。私以上に、彼らもドキドキしていることだろう。
失敗は若者の特権だ。どんどん失敗して大きくなれよ。定年まで勤める頃には、人も二三人轢くだろうて。