17歳といえば、充分アイドルである。今から思えば、彼女はもう少し大人に見えた。いや、私が子供だったのかもしれない。
それはルックスだけでなく、サウンド面にも見られた。あの松任谷正隆の全面プロデュースを受け、彼女は鳴り物入り(かどうかは定かではないが)でデビューした。当時、世界に数台しかないという時価数億円の最新シンセサイザー”シンクラヴィア”で全曲がアレンジされ、さながら松任谷氏の実験場的なアルバムのように思えるが、実に素直なガールポップに仕上がっている。
それは、彼女の声によるところが大きい。高音部でもファルセットに回らず、少しハスキーがかって突き抜けていくと、爽快感が耳に残る。それが私をリピーターとならしめる要因の一つであろう。
残念ながら、今井麻起子としてのキャラクターを発揮することなく、2枚のアルバムを残して彼女はミュージックシーンから消えていった。資本主義は実に厳しいものだ。
何千何万という楽曲が発表され、何百というミュージシャンが巷に躍り出ては消えていく中、今井麻起子に出会ったということだけで、それは私の財産である。
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