オリジナルラヴの田島貴男をヴォーカルに迎え、第2期ピチカートファイヴがスタートしたが、私は内心不安でいっぱいだった。正常な男の子としては、ピチカートファイヴは佐々木麻美子であるべきであった。男臭いピチカートファイヴなんぞ御免である。
前作から一転、汗臭くないソウルという、まるでマットビアンコみたいな謳い文句のアルバムだったが、そのサウンドはどこか探り探りな印象を受けた。「カップルズ」で展開されたソフトなメロディーに、田島のヴォーカルがそのまま乗る。あれ、違うぞ、と感じたのは、私だけではないはずだ。
しかし、その懸念は次のアルバムで払拭される。「女王陛下のピチカートファイヴ」は、バート・バカラックに傾倒している小西が作り上げた、映画のない映画音楽だった。
田島のヴォーカルにどっしり重きを置いていた「ベリッシマ」に比べ、中心は小西&高浪のサウンドへ移った。加えて、様々なゲストミュージシャンの参加で、バラエティ豊かなアルバムになった。これは次の「月面軟着陸」へとつながり、ピチカートファイヴのサウンドが確立され始めた。
しかし、ここで田島貴男がオリジナルラヴの活動に専念するということで脱退。第2期ピチカートファイヴの終焉である。
次のヴォーカルは誰か。私は、戸川京子あたりが有力だと思っていた。彼女自身、ピチカートファイヴの大ファンであり、「月面軟着陸」にもゲストヴォーカルとして参加、また彼女のアルバム「O'can」では、全詞を小西氏が書いている。
誰しも待ち望んでいた次のヴォーカル、それは、意外にも元ポータブルロック、野宮真貴だった。ピチカートファイヴ、怒涛の第3期の幕が開ける・・・。
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