ピンは難しい。ギャラは分けなくても済むが、板の上では一人しかいない。ネタを間違えても誰もフォローしてくれないし、誰も突っ込んではくれない。
何が難しいのか、それは間である。漫才は、呼吸やテンポさえあっていれば、ある程度喋りでごまかすことができる。だが一人ではそうはいかない。間の取り方を一つ間違えば、ネタふりやオチ運びが全て台無しになる。
その間の取り方がうまいと思う芸人は二人いる。マギー審司とヒロシだ。マギー審司の間は絶妙である。本来マジシャンに間などいらないが、あの間の取り方は関西芸人も見習うべきだ。
ヒロシは、いわゆる独白一行ネタ型のピン芸人である。実は最も危険な芸だ。過去に何人も沈んでいる。つぶやきシロー然り、ふかわりょう然り。
方言を使っているところはつぶやきシローのようだが、訛り具合はやや浅い。ネタは恐ろしく自虐的で愚痴に近いが、伏目がちで絶対にカメラや客席を見ず、しかも泣きそうな顔で終始演ずるので、客はネタに集中できる。加えて元ホストというルックスのよさが、余計に哀れみを誘う。
終始伏目がちという彼のスタイルが、絶妙な間を取らせた要因でもある。客と目線を合わせないということは、客は必然的に演者に集中する。彼が次に何を言うのか、客は期待する。ここでの次のネタへの間は重要である。どのネタで盛り上げるかという計算も必要だし、一つ一つのネタの受け具合で、間も変えていかなければならない。
喋りネタのピン芸人は厳しい。イラストや小物に逃げるピン芸人が跋扈する中で、久々に出てきた本格派ではないだろうか。