神戸

小学校5年生の春の遠足で、初めて神戸に行った。花隈で降りて、花隈公園で整列して、船で神戸港めぐりをした。弁当はどこで食ったっけな。二十年以上前なのであまり憶えていない。
遠足が終わってしばらくして、クラスの女の子が髪をばっさりショートカットにした。遠足の集合写真には、まだ髪を切る前のその子が写っている。あれ、こんなかわいい子いたっけ?
私が公式に初恋相手としている高瀬京子さんがその人だ。ググっても何も出てこないぞ、と思ったら風俗嬢に同じ名前が。いやあああっ。
彼女は未だにトラウマで、といっても本人がどうこうではなく、髪型を変える女性に意味もなく惚れたり、ジーン・セバーグやシャーリー・マクレーン、ジュリエット・ビノシュといったショートカットの女性を好きになったりするわけだ。
そんなこんなで、遠足で初めて行った神戸という街も、私のトラウマとなった。
次に神戸に行くのは、なんと大学に入ってからである。京都からは近くて遠いのが神戸だ。友人の車に乗って、六甲や元町を巡った。授業で制作する映画のロケも無理矢理須磨でやった。本を書いたのはもちろん私だ。
就職に失敗し、卒業後はバイトをそのまま続けた。まだバブルだったので、収入はよかった。しかし、泡は弾けた。仕事が目に見えて減っていく。
そんな時、神戸で仕事をすることになった。わざわざ大阪で独り暮らしを始めたのに、わずか一年で交通費の掛かる神戸に職場が移った。
京都で生まれ、大阪に住み、神戸で働く。まさに京阪神をまたにかける男であった。なんちて。
なんとなく憧れを抱き続けた神戸で仕事ができるということは、確かに嬉しかった。海も近い。遠足で行ったところもすぐそこだ。
収入が減り、独り暮らしができなくなって京都の実家に戻っても、神戸での仕事は続いた。毎回ちょっとしたお出かけ気分だ。
そして去年、その神戸での仕事を失うという危機に陥った。十年以上もの間、通い続けた神戸にもう来れなくなる。数々の出会いや別れ。恋もあった。震災もあった。できれば神戸で仕事がしたい。
普段ギャンブルをやらないと、こういうときに強運が巡ってくる。私は新しい神戸の仕事を手に入れたのだ。周りの人々は訝る。なぜ京都からわざわざ、と。すると私は答える。
神戸が好きだから。
そして、そんな神戸で、新しい仕事がもう一つ増える。あ、こんな奴ですが一つよろしくお願いします。

↓こんな子とかね

みかつう

ツイッターは@crescentwroksだよん

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