山歩きのススメ

誰に頼まれたわけでもなく、毎日せっせと山道を歩いて地図をつくっている。
しまった、地図メーカーにでも就職すればよかったな。
データが揃ってきたので、突然現れる分岐も、たぶんこれはあっちだなと大体の見当がつく。
それでも、見知らぬ道を、街中ならともかく山道を歩くのは、一つ間違えばその先には死が待っている。
今日も、割と人里に近いところで鹿に出会った。もっとも、警戒しているのは向こうのほうで、こっちをじーっと見たまま微動だにしない。
もし突然出くわして蹴られでもしたら終わりだ。
道が必ずどこかに通じているわけでもない。
道がいつの間にかなくなって、行く手を木々に阻まれることも多々ある。
そのときは引き返す決断も必要だ。
見知らぬ分岐を進み、崖の縁を歩き、沢を渡り、その先に待っている何かを見つけるまでひたすら歩く。
つまらぬ日常に嘆いているそこの諸氏、来週は山なんかどうだ。
富士山へ登る必要はない。近くの山で充分だ。
そこにはスリルとサスペンスと、色づく山々と、もしかしたら出会いと、翌日の筋肉痛が待っているぞ。