久しぶりに、本当に久しぶりに、値段に見合った映画を観た。
芸術的で敷居は高いが、どういう形であれ一度観ていただきたい。映像に関わる者であれば方向はどうであれ、観なくてはならない作品である。
京都みなみ会館は、実は初めて訪れる劇場だ。存在も名前もずーっと昔から知っていたが、当時の私には京一会館があった。
足を踏み入れると、小奇麗な京一会館といった感じだった。客席の床は坂ではなく弓なりで、前から三分の一のところが底になっている。
シートのクッションはやたら柔らかい。通路に面した席に座ったが、私の席だけ通路側の肘掛がなかった。
シネコン全盛の折、こういう小さな劇場は絶やしてはならない。
佐藤雅彦+植田美緒:TOKYO STRUT
単純な点と線で描かれた人と犬。音楽に合わせてリズミカルに動く。それだけなのだが非常に面白い。
田名綱敬一:トーキョー・トリップ
原色で描かれたいろんな生物らしきモノ。どぎつい。
清家美佳:釣り草
モンティパイソン風。わかりやすい暗喩がいい。
大山慶:ゆきちゃん
子供の一人称視点から描いている。ストーリー性が一番強かった。
しりあがり寿:イヌトホネ
とても片手間に描いたとは思えない(笑)、いちばんほっこりした作品。さすが。
束芋:公衆便所
タイトルの便はミラー字。古風なタッチで鋭い展開。
宇田敦子:<blink>トウキョウ</blink>
点滅する東京観光。もうちょっとポップな音楽ならよかったかも。
相原信洋:BLACK FISH
書きなぐったようなタッチの中に、次第に浮かぶ何か。視覚的に非常に危機感を覚える作品。
伊藤高志:アンバランス
実験映像としては評価するが、これをアニメーションと呼ぶにはいかがなものか。鑑賞に堪え難い。
しまおまほ:Tokyo Girl
クラフトワークのアウトバーンをちょっと思い出した。作家の個性が強く出ている。
和田淳:声が出てきた人
キャラが特徴的で、実にシュールである。
村田朋泰:ニュアンス
実写の風景にいろいろ手を加えた表現。どこかで見たことある人もいるだろう。
古川タク:はしもと
彼を知らずして、日本のアニメーションは語れない。アニメーションたるアニメーションである。
久里洋二:フンコロガシ
しかし大御所のモチーフがうんことは。
山村浩二:Fig
何か大きなモノを感じさせる作品である。
岩井俊雄:12 O'Clock
現代アートアニメを代表するような作品。
コンピュータの発達により、アニメーションの表現方法もかなり変わった。しかしツールは変われど、アニメーションはアニメーション、動いてなんぼである。
改めて日本のアニメーション作品の奥深さを思い知った。商業アニメだけでなく、こういうアート系アニメもアキバくんたちに観てもらいたいものだ。