テレビでやってたのを観たのだが、まあさすがという感じである。
舞台をある特定の場所だけに限定して、その中で物語を展開させる演出方法を、グランドホテル形式という。
映画では珍しい部類に入るのだが、とどのつまりは舞台と同じなのである。大抵の舞台劇は、一つのセットで劇が進行する。「ラヂオの時間」は、グランドホテル形式で演出するぞとつくられたものではなく、舞台でかけるような物語を映画化したものだ。
三谷監督最新作「THE有頂天ホテル」では、1シーン1カットという暴挙にまで発展しているが、だったら舞台でやってくれよと思うのも無理はない。まあ、あれだけのキャストで公演を打てばチケットが3万くらいかかるだろう。
映画は舞台より手軽とは言わないが、作ってしまえばいつでもどこでも何度でも観られるというのは利点でもある。
大学で教わった言葉に、1スジ2ヌケ3役者というのがある。映画はまず第一に脚本(筋)、第二に映像(フィルムの抜けの意)、第三は役者の芝居である。
三谷作品の場合、ヌケには特筆すべき点はないが、スジと役者はほぼ満点に近いものがある。特に役者は舞台役者がずらりと揃っているので外れようがない。
素晴らしい脚本、信頼できる役者、これだけ揃って面白くないのなら、それは監督の責任だ。
私は基本的に、映画というのは監督の自慰であって、観客はその自慰に金を払って付き合わされている。それが嫌なら観なければいいだけの話だ。
しかし、これだけ楽しい映画をつくってくれる監督の自慰なら、一緒に楽しみたいと思う。いや、ヘンな意味じゃなくてね。
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京都の二映画館閉館へ
日本経済はデフレから脱却しつつあるようだが、弱者の淘汰は未だ静かに進んでいる。
京都に完成した松竹系の巨大シネコンは、全部で12のスクリーンを持つ。映画館12館分だ。松竹配給作品だけに限らず、他社の作品もかけている。
そのあおりを食らって、二つの映画館が閉館する。京都スカラ座と、京都宝塚劇場だ。
二つとも河原町通りに面しており、手書きの看板を掲げている唯一の映画館だ。ということは、看板絵描き職人の仕事も奪うことになるわけだ。
無くなると聞いてふと気がついたのだが、その映画館の近くを通るたびに、ああこんな映画やってるんだなと看板を見上げていた。あの看板は決してムダではないのだ。
たぶん表立ってそう問題にはならないのだろうが、これは大きな損失である。
シネコンとオフシアター、今後はこの二系統で共存していくのだろう。映画の都と言われる京都にも、寂しい風が吹き始めたということか。
SIN CITY
とうとう私の周りの映画館はシネコンばかりになってしまった。ロードショーものを観るにはもうシネコンに行かないと観られない。いよいよこのときが来たか。私は覚悟を決めた。まあ、そんな大したことではないが。
MOVIX京都は、京都の繁華街にあるツインシネコンである。これが建ったお陰で、ピカデリーも松竹京映もなくなった。足しげく通った映画館だ。
チケットは全て一階で受け付けている。並ぶためのバリケードが迷路のように張り巡らされてある。休日はきっとすごい列なんだろう。なんせ7つある劇場全てのチケットを扱うのだから。
一番の気掛かりは、席である。全席指定席だ。融通はきくのだろうか。いつも行く平日午前の上映なら人も少ないし大丈夫だろうと思っていたら、その通りだった。中央通路に面したやや左の席。ベストポジションだ。
シートも深いし、背もたれもかなり高い。さすがに新しいだけあって居心地よく設計されている。まあまあ、このくらいならよしとしよう。
さて、「レジェンドオブメキシコ」では見事に裏切ってくれたが、今度はどうだろうか。
全編モノクロで、部分的に色が付いている。口紅とか、血とか。モノクロでよくわからないが、どうも背景は全てCGだそうだ。
ナレーション進行が少し気になる。かなり原作に忠実に制作されたようで、それでようやく原作者を口説き落とせたらしい。
物語は、3話に分かれている。オムニバスではない。微妙にだがそれぞれに交錯している。ほんの少しだけだ。それぞれのメインに、ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライヴ・オーウェンが当たる。
それほど入り組んだストーリーではなく、各シーンの散りばめ方も簡単にしてくれているが、モノクロなので映像から受ける印象が単調になり、映像と関連付けて覚えることが難しくなっている。
それもこれも、やはりコミックのような映像を追求したせいだろう。
映像的にはやはりその影響もあって単調な印象だが、その分キャラクターが引き立っている。やはりタラちゃん一家はキャラクターの書き込みがうまい。
あのイライジャ・ウッドがジェット・リーばりのアクションをこなし、五右衛門のように無言で二刀を振るううデヴォン・青木、最初と最後に出てきておいしいイケメン、ジョシュ・ハートネット。などなど、いずれもメインを食わんばかりの存在感である。
配給元はラブストーリーとのたまっていたが、ベタベタしたものは当然ながら一切ない。モノクロの映像に隠されたハードな感情表現が垣間見えるだけだ。
ただ、一貫して女を守る男の姿が執拗なほどに描かれている。それは切なくもあり、また滑稽でもある。男は、女を守るために生きる生き物だと。
派手なガンアクションこそなかったが、ロバート・ロドリゲス、静かなる名作になるだろう。
あぶない刑事復活
舘ひろし55歳、柴田恭兵53歳。さすがにもう続編はないなと思っていたら、秋に復活する。
銃を撃たない刑事ものが跋扈している現状にさすがに辟易している。Vシネにいけばヤマほどあるが、どうにも消化不良であった。
タカの586が、ユージのローマンが再び火を噴くのだ(残念ながらタカはオートの模様)。
もちろん仲村トオル(39)、浅野温子(44)らレギュラーメンバーも出演する。港署はかなりびっくりの人事異動になっているらしい。公開は10月予定。
http://www.toei.co.jp/movie/index.htm
ヒドゥン
SFか刑事ものかと問われれば、私は刑事ものと答える。フェラーリにぶち込まれる銃弾の雨、マジでエイリアンのようなカイル・マクラクラン、骨太刑事のマイケル・ヌーリー。悪のエイリアンが次々と民間人に憑移していき、それを追い掛ける二人。立派なバディムービーである。
銃の話。マイケル・ヌーリーが持っているのはベレッタM92SB。名銃92Fのベースとなったモデルである。外観上は92Fとさほど変わらず、トリガーガードが丸いことくらいだ。確かこの頃はまだベレッタはあまり登場せず、まだガバやSWリボルバーが幅を利かせていた時代だったと思う。
カイル・マクラクランが持っているのはS&W・M645。45口径のステンレスモデルである。一応FBI捜査官から奪った(というか成り済ましている)という設定だと思うが、この頃のFBIって645みたいな銃は持ってなかったような・・・。PPK腰だめでダブルタップ、みたいな時代だったように思う。
撃っても死なないというシチュエーションは、既にターミネーターがやっていた。それは豪快なガンアクションを演出できるので、ロボコップやこの映画でも取り入れられている。細かな演出も忘れていない。ちゃんと発射音に違いがあって、マニアも納得のガンアクションである。
ガンアクション以外でいうと、カイル・マクラクランと娘の関係が気になる。ラスト、瀕死のマイケル・ヌーリーに乗り移り、彼の命を助ける(でも中身はカイルじゃねえの?)のだが、意識を取り戻したマイケルを見つめる娘の演技がちょっと気になる。正体に気づいている節が窺えるのだ。しかし、娘役の女の子が小さ過ぎて感情の機微が今一つ芝居に現れず、ややわかりにくい演出になった。
地味な作品だが、コアな人気を博した映画である。続編のようなものもつくられたが、それはそっとしておこう。
フェイス/オフ
シナリオは全くのB級だが、それを超大作にしてしまうのがハリウッドであり、ジョン・ウーである。香港ノワールはもちろんハリウッドでも健在であり、今やガンアクションのスタンダードになった。しかし、この映画はニコラス・ケイジの映画か、それともジョン・トラボルタの映画か。得をしたのはどっちだろう。
悪役はニコラス・ケイジ、善役はジョン・トラボルタであるが、映画のほぼ大半は善悪入れ替わって演じられる。ジョン・トラボルタが生き生きと悪役を演じるのに対して、ニコラス・ケイジは顔だけ悪者なので徹底的に打ちのめされる。おまけに対決して死んだのは見た目ジョン・トラボルタなのに、ラストも持っていかれては、ニコラス・ケイジの立つ瀬がない。
結局おいしいのはジョン・トラボルタということになる。個人的には、ニコラス・ケイジの溶けたような顔立ちが苦手ではある。
シナリオは同じでキャストを女性に替えてリメイクするという話があるそうだが、そっちのほうが損得で女優がもめそうな気がする。
ガンアクション演出講座 #やるなら徹底的に
こないだの土ワイ「警視庁捜査一課強行犯七係」の冒頭、ガバの発火シーンから始まったのはいいが、スライドなし。まあいいかと思ってちょっと観てみた。
銃を持った犯人が公園に逃げ込んで、若い男を人質に取る。その男、実は非番の刑事で、犯人を説得して逮捕する。犯人から銃を取り上げ、サムセイフティを掛けて別の刑事に渡す。ここまではいい。
だが、その犯人の持っていたガバは、終始ハンマーが起きていない状態だった。ガバはシングルアクション、人質に突きつけるならハンマーはせめて起こしておこう。確かその前に発砲するシーンがあったので、ハンマーは起きていないとおかしい。
一見すると銃に詳しいぞ的な演出に思えるが、実のところそれほどわかってないということである。ただ、犯人役の君、君の銃の突きつけ方はよかった。銃口を相手の身体に垂直に付けて、下手すりゃ貫通して自分にも当たるのだが、あれはなかなかよかった。演技指導というより、君の感性だろう。
そこまで観て風呂行った。渡瀬恒彦さんは結構最近刑事役多いね。思い出すなあ、大激闘。