駆逐される映画館

大阪、道頓堀にある映画館が全て閉鎖される。難波駅北に東宝系シネコンがオープンしたのに続いて、南側のなんばパークスにもシネコンがオープンしたためだ。
スクリーンの数自体はむしろ増えているので、映画ファンとしては何ら悲しむことはない、はずだが、劇場が閉鎖されるというのはやはり寂しいものだ。
特に道頓堀東映パラスは、私が初めて女性と映画を観に行った劇場であり、初めて映画を観て涙を流した劇場でもあった。
映画館にはもちろん映画を観に行くわけだが、実はそれだけでなく、小屋の雰囲気を味わう楽しみもあった。
大型スーパーの登場で商店街が寂れるように、小さな映画館がどんどんシネコンに飲み込まれていく。
映画を観られればそれでいいのかもしれないが、映画を観に行くというイベントの機微のようなものが失われていくようで、それが寂しくて仕方ない。
れいちゃん、もう忘れてるやろなあ。

TOKYO LOOP

久しぶりに、本当に久しぶりに、値段に見合った映画を観た。
芸術的で敷居は高いが、どういう形であれ一度観ていただきたい。映像に関わる者であれば方向はどうであれ、観なくてはならない作品である。
京都みなみ会館は、実は初めて訪れる劇場だ。存在も名前もずーっと昔から知っていたが、当時の私には京一会館があった。
足を踏み入れると、小奇麗な京一会館といった感じだった。客席の床は坂ではなく弓なりで、前から三分の一のところが底になっている。
シートのクッションはやたら柔らかい。通路に面した席に座ったが、私の席だけ通路側の肘掛がなかった。
シネコン全盛の折、こういう小さな劇場は絶やしてはならない。

佐藤雅彦+植田美緒:TOKYO STRUT
単純な点と線で描かれた人と犬。音楽に合わせてリズミカルに動く。それだけなのだが非常に面白い。

田名綱敬一:トーキョー・トリップ
原色で描かれたいろんな生物らしきモノ。どぎつい。

清家美佳:釣り草
モンティパイソン風。わかりやすい暗喩がいい。

大山慶:ゆきちゃん
子供の一人称視点から描いている。ストーリー性が一番強かった。

しりあがり寿:イヌトホネ
とても片手間に描いたとは思えない(笑)、いちばんほっこりした作品。さすが。

束芋:公衆便所
タイトルの便はミラー字。古風なタッチで鋭い展開。

宇田敦子:<blink>トウキョウ</blink>
点滅する東京観光。もうちょっとポップな音楽ならよかったかも。

相原信洋:BLACK FISH
書きなぐったようなタッチの中に、次第に浮かぶ何か。視覚的に非常に危機感を覚える作品。

伊藤高志:アンバランス
実験映像としては評価するが、これをアニメーションと呼ぶにはいかがなものか。鑑賞に堪え難い。

しまおまほ:Tokyo Girl
クラフトワークのアウトバーンをちょっと思い出した。作家の個性が強く出ている。

和田淳:声が出てきた人
キャラが特徴的で、実にシュールである。

村田朋泰:ニュアンス
実写の風景にいろいろ手を加えた表現。どこかで見たことある人もいるだろう。

古川タク:はしもと
彼を知らずして、日本のアニメーションは語れない。アニメーションたるアニメーションである。

久里洋二:フンコロガシ
しかし大御所のモチーフがうんことは。

山村浩二:Fig
何か大きなモノを感じさせる作品である。

岩井俊雄:12 O'Clock
現代アートアニメを代表するような作品。

コンピュータの発達により、アニメーションの表現方法もかなり変わった。しかしツールは変われど、アニメーションはアニメーション、動いてなんぼである。
改めて日本のアニメーション作品の奥深さを思い知った。商業アニメだけでなく、こういうアート系アニメもアキバくんたちに観てもらいたいものだ。

雨に唄えば

久しぶりに買った新聞に、レイトショーならぬモーニングショーで上映されていることを知り、一度スクリーンで観たかったので行ってきた。
ちょうど仕事も入っていたので、交通費も浮くというわけだ。
OS名画座は、ナビオとHEPの間辺りにある。間違えてEST1のほうへ行ってしまったので迷った。梅田でもあまり歩いたことがない地域なのでややこしい。
たぶん立地としては古い劇場だと思うが、改装したのかかなり新しい感じだ。スーツ姿の私は完全に仕事をサボっている営業だ。んなことはどうでもいいが。
上映当時のプリントだろうか、かなり状態が悪い。15分に一回くらいコマ飛びがある。ぶっちゃけ、DVDでも借りて観たほうが画質はいいだろう。あれ、スタンダードだっけな。
しかし、映画は劇場で観るものだ。スクリーンのミュージカルシーンは圧巻である。
ミュージカル映画にしては、しっかりしたシナリオだ。特にジーン・ケリーの場合、シナトラと組んだ作品は似たようなシナリオで困る。
アクロバティックなお得意のダンスシーン。ジーンだけでなく、共演のドナルド・オコナーも負けず劣らずのステップを見せてくれる。
タイトルナンバー以外にも、たくさんの曲があり、それぞれ素晴らしいダンスシーンになっている。
今日一日、ずっとそれらの曲を口ずさんでいたのは言うまでもない。
雨に唄えばicon

邦画が洋画を抜いたそうな

興行収入において、21年ぶりに邦画が洋画を抜いたそうだ。
斜陽と呼ばれて久しい映画業界にとって喜ばしいニュースには違いないが、手放しで喜んでばかりもいられない。
ハリウッドが慢性的なコンテンツ不足に陥っていることは、数年前から顕著であった。
ヒット作のシリーズ化はもとより、日本やアジアでヒットした映画のリメイクなど、膨大な製作費をペイできないことを恐れて、皮算用を確実にするためになりふり構わぬ態度をとってきた。
幸い、まだ日本にはクリエイティビティなスタッフが揃っているので、ハリウッドの二の舞にはならないだろう。
しかし、昨今制作されている映画は、スケールの小さいものが多く、芸術的な作品も皆無である。つまり、テレビの延長のような映画が多すぎるのだ。
1800円も払って、テレビの延長のような映画を観るつもりはない。
興行収入が増えたからといって、日本映画が面白くなっているかと言えば、NOだ。調子に乗ってあぐらを決め込んでしまえば、またつまらない時代に逆戻りだ。
結局去年は1本しか観なかった。今年はもう少しは増えそうだが、そろそろ作る側に回る頃なのだろうか。

松本人志監督

オリジナリティへの固執という点においては、大いに共感する。尤も私の場合、SF小説でそれを全うするにはかなり難しい話だが。
映画好きに映画が撮れないように、映画の世界だけは好きこそものの上手なれとはいかないのが現状だ。
私は、松本人志監督に映画を期待していない。一時間、二時間のコントだと思っている。
ジャンルについての質問を氏がはぐらかしたように、出来上がる作品は恐らく壮大なコントだと思う。
松本人志に、北野武を期待する人は、きっと裏切られるだろう。そして、そんなものは我々も期待していない。
笑いの神と崇められた松本人志が、劇場でどれだけ我々を笑わせてくれるか。そこには映画というような仰々しいものはない。
それは、チープな映画を作り続けている日本映画界に対する皮肉でもあるのだ。
では、松本人志が作る映画もやはりチープなのか。それは一見してからの話になる。
期待した映画ほど外すのは何かの法則らしいが、果たして。
http://www.dainipponjin.com/

MIAMI VICE

終始クールな映画だった。そういえば、ソニィもタブスも笑ってなかった。あのテレビシリーズを期待している人は、観ないほうがいいかもしれない。
だが、ジートもトルーディもジーナもスワイテクも、警部はだいぶふっくらしたが、懐かしい名前がみんな揃っていて、明らかにこれは「マイアミバイス」なんだと教えてくれる。それに、マイケル・マンが撮っているのだから、何の文句があろうか。
ファーストカット、仕掛けはまったくなく、普通にすっと入る。まるで先週の続き、みたいな感じだ。
フィックスショットがなく、ハンディの映像がほとんどだ。銃撃戦シーンではよくやるが、全編通して使うのはかなり珍しい。スクリーンから距離を置かないと酔う客が出てきそうだ。
ガンアクションも小出しだが密度は濃い。いきなりバレットM82ときた。腕がもげるぜ。
ハンドガンを使用するシーンがあまりないというか、撃ってない。ちょっとくらいあってもよかった。
タブスはグロックっぽかったが専門誌によるとスプリングフィールドXDだそうだ。現物を見てもコピーにしか見えないので無理もない。ただし、トルーディ救出のときの公式サイトのスチールを見ると、ジェリコっぽい丸みを帯びたフレームが見える。
ソニィはステンレスの45っぽいオートに見えたが、インフィニティというカスタムメーカーの銃らしい。出動前にスライドとフレームをかちゃかちゃ擦り合わせるシーンもある。このへんのこだわりがガンマニアとしては嬉しいところだ。
さて、銃声だけが響くお得意の銃撃戦。音はさすがだ。マイケル・マン以外にはできない芸当だ。脇扱いのタブスがお約束のショットガンで敵のリーダーを撃ちぬく。スラグだ。
ジーナがHK・G36Cでヘッドショットを決めるシーンもなかなかだ。トルーディが人質に取られて首に爆弾を仕掛けられ、起爆装置を持った犯人と対峙。この銃で頭をぶち抜くとお前は指を動かす間もない云々と言って、犯人が答えようとした瞬間に撃つ。セオリー通りのアクションはさすがだ。
一般ウケしない映画だが、アメリカの刑事ドラマの最高峰には違いない。雷鳴が轟くマイアミの街。犯罪に立ち向かう刑事たちの怒りなのか、それとも。

デスノート予告編

よく予告編に騙される。
ネットでも予告編は映画の公式サイトやトレーラーサイトで観られるのでたまに観るのだが、予告編というのはその映画のいいところばかり集めているので、面白そうに見えるのは当たり前なのだ。
だから予告編を観て本編を観に行くとがっかり、ということは多々ある。
デスノートという作品がある。原作は知らないが、面白そうなプロットだ。予告編を観てみた。
なんじゃこりゃ。
映画を本格的に観始めたのは高校生からで、もうかれこれ二十年近く映画を観てきたが、こんなに面白くない予告編を観たのは初めてだ。
予告編でこれなら、本編はこれよりまだ下をいくことになる。
金子修介さん、何か悩み事があるのなら聞くよ。

DEATH NOTE TRIBUTEicon