帰り道。
駅に特急が入ってきた。なぜか速度が遅い。ここは特急の停まる駅ではない。
早足でホームを歩く私が追いつきそうだ。
そのうち同じ速度になり、追い抜いたと思ったらゆっくり停まった。
もう紅葉の時期は終わったが、まだ混雑でもしてるのか。
「開けろー」「乗せろー」と小声で言いながら、いつも乗り込むホームの端まで歩く。
すると、運転席から列車無線が聞こえてきた。
どうも人身事故が発生したようだ。
耳をそばだてながら「マジか」と思わず口に出したら、運転士が話しかけてきた。
まさか話しかけてくるとは思ってなかったので、若干びっくりしながら「起きたてですか?」と聞くとそうらしい。
人身事故なら一時間くらい動かないらしい。運転士は信号を見ながら、この信号行っていいんかなとか言っていた(知らんがなw
やがて信号が青になり、とりあえず次の駅まで行ってきますと言い残して、特急は去っていった。
私は敬礼で見送りながら、改札まで戻った。
まだ駅のアナウンスもなく、私は駅員に運転士から聞いた事故のことを尋ねると、やはり人身事故が起こったようだった。
駅員が人身事故のアナウンスをし始めたので、私はICカードの入札をキャンセルしてもらって改札を出た。
普段なら、人身事故で自分の乗る鉄道が止まるなど、むかっ腹で小一時間は悪態をつくところだが、運転士と話したことがけっこう嬉しかったのか、全然そんな気分じゃなかった。
駅員はあるかもしれないが、車掌もまだあるかもしれないが、電車の運転士と話す機会はそうそうないと思う。
一駅分歩くと、バスで帰れる。
その駅の踏切を覗き見ると、さっきの特急が足止めされていた。
お先。