機甲創世記モスピーダ

ブライガー、アクロバンチと並んで、金田オープニング3部作と呼ばれて(?)いるのがモスピーダである。ノリのいい曲とともに、金田節全開の作画がスピーディに展開する。
モスピーダは音楽制作に比較的力を入れており、OP、EDや挿入歌はなかなか聴き応えがあった。特にエンディングはテレビアニメ史上初のブルースであり、私も好きな曲の一つである。
劇中に登場するライドアーマーは、バイクが変形してパワードスーツのようになるのだが、理にかなった無理のない変形をしており、なかなか素晴らしいギミックである。バイクが変形してロボットになるというのは、恐らく変形メカとしてはあまり例がない。当時、ちょうどバイクに興味が出てくる年頃だったので、アニメファンでなくてもこの番組を観ている友人は多かった。
ただ、この作品も残念ながら低視聴率のため2クールで打ち切り、ハードSFな舞台設定を活かしきることができなかった。しかし、アメリカでは「ROBOTECH」として再制作され、かなりの人気を博したようだ。

魔境伝説アクロバンチ

”スタジオNO.1と金田伊功”と聞けば、チャンネルを合わせないアニメファンはいない。もちろん、当時の私もその一人だった。
あのブライガーには及ばないものの、金田節全開のオープニングは殿堂ものである。パースや骨格を全く無視した人物作画が、いざアニメーションとなるといきいきと動き出す。
一番弟子と言われた越智一裕が初演出を手掛けたのもこの作品である。師匠に言わせればまだまだの出来だったそうだが、当時としては大抜擢である。
また、いのまたむつみが作画監督、キャラクターデザインとして初めてクレジットされるのもこの作品である。既に葦プロ作品で頭角を現し、人気も出てきたときであった。
リアルロボット全盛の時代、確かに作画に関しては話題性が高かったが、ストーリーの完成度が低かったため、やはりこの作品も低迷した。放映時間も3度変更(関東地区)され、視聴率という魔境で番組もさまよったようだ。

銀河旋風ブライガー

”夜空の星が輝く影で、悪(ワル)の笑いがこだまする
星から星へ泣く人の、涙背負って宇宙の始末
銀河旋風ブライガー、お呼びとあらば即参上!”
柴田秀勝の口上であの伝説のオープニングは始まる。ブライガーは、オープニングが全てと言っても過言ではないだろう。
銀河旋風ブライガーは、必殺シリーズをモチーフとし、J9シリーズ三部作の最初にあたる。オープニングに加えて、軽妙洒脱なセリフが話題を呼んだ。塩沢兼人が熱血キャラをあてるのも珍しい。
以前、BSアニメ夜話で銀河鉄道999の話をしていたにもかかわらず、なぜかブライガーのOPが流れた。金田伊功の話に言及して流れたわけだが、コマ送りして動きや作画のおかしさを確かめてみたり、スリーナインそっちのけでかなり長い間話が続いていた。たぶん、テレビの前で相槌を打っていたマニアも多かったはずだ。
金田氏は本編には一切関わっていない(はず)だが、DVD-BOXのジャケットを書き下ろすなど、ブライガーと氏とは切り離せない間柄にある。
ゲームでブライガーを知った人も多いと聞く。ロボットアニメとしてはいささか物足りないところもあるが、J9シリーズはメカよりもキャラが魅力なので、DVDやCSなど、名前を見かけたらご覧いただきたい。もちろん、金田伊功作画演出のオープニングは必見である。

戦闘メカザブングル

富野喜幸がガンダムで注目された後なので、ザブングルは大いにファンや業界を沸かせた。ガンダムのようなリアルロボット路線を歩むかと思いきや、意外にもギャグものであった。丸顔の主人公がその証拠である。
ではリアルではなかったかといえば、ウォーカーマシンなどは実にリアルで、そのまま街角の工事現場に置けるくらいディテールが細かかった。しかもハンドル操作で動くのだ。
その分、主役メカのデザインがギャグのように浮いてしまい、物語の途中で交代するという前代未聞の出来事が起こってしまう(後にサンライズの定番となる)。
私が触れたいのは、銃の話である。放送当時はあまり銃について詳しくなかったが、後にザブングルがかなり銃について細かい設定や描写があるというので、改めて見直してみた。実は、登場キャラ一人一人にお抱えの銃があったのだ。
例えば、主人公のジロン・アモスはブローニングHP、ラグ・ウラロはHK・P7、ブルメはエンフィールド、チルはスコーピオン、ダイクはキャリコ、キッド・ホーラはモーゼルミリタリー、ティンプはもちろんコルトSAAなど、まさにマニアでしかわからないような設定になっている。そういえば、オープニングでは各キャラが発砲するカットがあるし、ジロンの持つブローニングHPのアップショットもある。興味を持って観ないと気づかないものだ。
残念ながら、本編では活躍の場をウォーカーマシンに譲るわけだが、制作に関わったガンマニアはきっと歯痒かったことであろう。

装甲騎兵ボトムズ

リアルロボットアニメの最高峰である。寡黙な主人公、全裸のヒロイン、重厚なBGM。子供の入る隙はない。
ボトムズがリアルロボットたらしめたのは、主役メカの設定であろう。これまでのロボットアニメは、主役となるロボットが特定の一台で、最強もしくはトップモデルであり、無類の性能を誇るものであった。しかしボトムズの主役メカであるATは、戦車や戦闘機などと同等の兵器であり、搭乗者によって能力の差はあるものの、基本的には量産兵器である。よくぞスポンサーが付き合ってくれたものだ。タカラには感謝したい。
物語の主人公であるキリコは、そのATをまさに兵器のようにぞんざいに使い捨て、ときにはカスタマイズして乗りこなす。今まででは見られなかった光景だ。
特定の主役メカ不在という状況でも、ボトムズのメカは実に存在感があり、何よりもかっこいい。中でも、炸薬で作動するアームパンチ、足裏のホイールを回転させて高速で移動するローラーダッシュ、そのローラーダッシュ中に足首から楔を地面に打ち込んで停まるターンピックといったアクションは、独創的でまさにロボット兵器の魅力をふんだんに描き切っている。
炎と煙、男と女、野望と策略。ドライでありながらもホットな人物描写も素晴らしい。来年の私の誕生日にDVDボックスが発売予定である。後世に残しておきたい作品だ。
あまり知られていないと思うが、主題歌を歌うTETSUとは、織田哲郎氏である。
装甲騎兵ボトムズ

ガサラキ

ダグラム、ボトムズなどを手掛けた高橋良輔が手掛けたリアルロボットアニメの集大成。日本を舞台に、能をモチーフにしたポリティカルアクションである。
結論から言おう。リアルロボットは、結局リアルではなかったということだ。二足歩行兵器を現実に持ち込むのは、やはり必然性がないのである。歩兵のパワーアップは既に米陸軍で実戦投入されているが、乗用兵器としてのロボットは、恐らく登場しないと思う。
リアルロボットのリアルとは、現実にできそうなという意味ではなく、荒唐無稽ではないという意味だ。マジンガーZやゲッターロボを思い浮かべていただくと、違いがわかると思う。それらに比べれば、ガンダムやダグラムなどは幾分か現実的である。
しかし、本当の意味でのリアルロボットを追求したとき、ロボットはリアルかというパラドックスに陥る。ロボットは、まだまだ空想の産物なのである。
ガサラキからタクティカルアーマーをなくしてしまえば、かなりリアルな面白い物語になったと思う。しかしまた、タクティカルアーマーのないガサラキも、成立しない。
ガサラキは、図らずもリアルロボットアニメの終焉を飾った。近い将来、家庭にペットロボットが普及し、工事現場で二足歩行機械が作業する頃、真のリアルロボットアニメが登場することだろう。

伝説巨神イデオン

今から考えれば、ガンダムと同時期に制作され放映されていたのだから信じられない。当時の私は、ガンダムよりもイデオン派だった。キッチンの死に泣き、ミサイル一斉発射に震え、理不尽な放送打ち切りに憤慨した。小学校5年生である。
メカの話ばかりで申し訳ないが、イデオンに登場するメカは重機動メカと呼ばれ、全てバッフクラン側の製造によるものである。全長100mを超えるイデオンに対抗するため、必然的にでかくなってしまったというわけだ。
始めはジグマックやドグマックなど人型を模していたが、後半は完全に対イデオン用ワンオフモデルとして、ガルボジックやギドマック、アブゾノールなどが登場した。
戦闘機も小さいながら比較的充実していて、ギルバウ、ゴンドバウなどイデオンにハーケン攻撃を仕掛けるものや、ズロオジックのように四機に分裂するものなど、多岐に渡った。
テレビ版では割愛されたが、物語も終盤に向かうにつれ、敵の兵器もどんどん大きくなっていく。イデオン中最大の戦艦、バイラルジン。”エ”の字型をしていて、全高はなんと10km以上。そんな乗り物をつくってしまうバッフクランでさえ、イデオンのパワーには適わない。
と思いきや、とうとうアニメ史上最大の兵器が現れた。ガンドロワである。全長なんと500km以上!東京-秋田間にも匹敵する(当時計った♪)のである。
ひらべったいウニのような形をしていて、そのトゲトゲで超新星のエネルギーを吸い取り、前面にある六角形をした三つの目から吐き出す。その威力は、惑星を吹っ飛ばすほどだ。しかし、イデオンはそのビームの直撃にも耐えてしまった。恐るべし。
しかし、二度目の発射で遂にイデオンは破壊され、差し違えのイデオンソードがガンドロワを貫き、近隣の宇宙もろとも壊滅する。合掌。
まさしく桁違いの作品であったが、哲学的なストーリーは大人になった今でも充分鑑賞に耐え得る。ただし、いきなり劇場版を観るよりテレビ版での予習をお薦めする。
伝説巨神イデオン