妖怪人間ベム

オープニングはジャズである。あんなクールなアニメソングは、ビバップかベムかというくらいである。話の内容は別に意味でもっとクールだ。
この作品、実は韓国製であることが最近わかった。今ではかなりの日本製アニメが韓国や中国で製作されているが、こんな古い時期から既に共同製作が始まっていたのだ。
言われてみれば、キャラクターや動きなど、同時期の他のアニメと比べてあまり類似点がないような気もしないではない。
当時は日韓関係も厳しく、反日感情は今の比ではなかっただろうが、両国の友好のために共同製作が企画されたそうだ。
残念ながら放映当時はスポ根もの全盛であまり人気が出ず、ベム以降の共同製作は解消された。しかし、再放送が繰り返されるうちに人気に火が付き、今では日本を代表するアニメの一つになっている。
折しも、高度経済成長期のツケが公害となって日本中を苦しめていた時代、妖怪人間ベムはこれからの社会のあり方について問題提起し、警鐘を鳴らしたのだ。
「早く人間になりたい」
番組では彼らのその思いは叶わなかったが、今ならその願いもきっと叶うことだろう。
参考資料 http://f1.aaacafe.ne.jp/~monokuro/bem.htm
妖怪人間ベム

魔法のプリンセスミンキーモモ

実に衝撃的な作品であった。ゴーショーグンのノリを引き継いだハッピーな魔法少女アニメは、悪ノリしすぎて本当に予告編でレミー島田を出してみたり、ミンキナーサというゴーショーグン紛いのロボットを出してみたり、やりたい放題みたいな印象があった。観てる側はそれで充分楽しかったのだが、それが衝撃のラストを引き立てる伏線とは思いたくない。
魔法少女もので、最終回に主人公が死ぬ作品は、後にも先にもミンキーモモだけであろう。
モモは、夢の国フェナリナーサから、人々に夢と希望を与えるためにやってきた。しかし、人々は夢も希望も持とうとはしない。だんだん魔力が失われていくモモ。そして、遂に魔法が消え、彼女は不慮の事故で死んでしまう。こんな悲しいラストが許されていいのだろうか。
主人公の死もそうだが、なんでもできるはずの魔法でさえ、結局は現実の人間に対して何もできなかったという、現代社会に対する皮肉が心に刺さる。モモを死なせたのは、実は我々の心だったのだと。
スポンサーの気まぐれで打ち切りと延長が同時に決まったため、最終回以降も第二部的に話が続いたのはせめてのも救いである。
90年代に続編が製作されたが、こちらもハッピーエンドにはならなかった。実に辛いアニメである。
キャスト
モモ:小山茉美
シンドブック:田の中勇
モチャー:木藤玲子
ピピル:三田ゆう子
パパ:納谷六朗
ママ:土井美加
王様:増岡弘
王妃様:塚田恵美子
スタッフ
監督:湯山邦彦
脚本:首藤剛志
キャラクターデザイン:芦田豊雄
作画:わたなべひろし
放映日時:1982.3.18~1983.5.26
魔法のプリンセスミンキーモモ

戦国魔神ゴーショーグン

私にとっては禁断のカテゴリーとも言えるアニメーション。手始めに葦プロあたりから攻めたいと思う。
葦プロと言えば、首藤剛志、湯山邦彦、いのまたむつみである(書いてて懐かしー)。気持ち的には小山茉美も入れたいところだ。私自身、ゴーショーグンはかなりはまった覚えがある。徳間書店刊で発売された首藤氏のオリジナル小説まで買っていたのだから、そのはまりようがわかると思う。
破滅志向に陥って大失敗した前作のバルディオスの反省もあって、ゴーショーグンは脳天気なくらいのネアカでスタートした。タイムボカンシリーズ並みの善悪キャラの掛け合いが絶妙で、各キャラクターが物語の中で実に生き生きとしていた。正直、ストーリーなどどうでもいい。ストーリーはキャラクターを見せる筋書きに過ぎないのだ。
しかし、このキャラクターありきの作風が、スポンサーのへそを曲げてしまった。おもちゃが売れないのだ。テレビ番組は、スポンサーの商品を売るために作られるのが大前提であり、それに叶わなかった番組は問答無用で打ち切られる。あのガンダムでさえそうなのだ。ある意味、ソーラレイより恐ろしい。メディアミックスの今なら、一本調子なスポンサーで番組が潰れることもなかっただろう。
スポンサーの眼鏡には適わなかったが、アニメファンはがっちりとゴーショーグンを受け入れた。その証拠に、現在もなおゲームなどでゴーショーグンの名を見かけることがある。ゴーショーグンを見て育った大人達の、せめてもの恩返しだと私は思う。
ところで、なぜゴーショーグンが”戦国魔神”なのか、ご存知の方はご一報いただけるとありがたい。
小説版ゴーショーグン 参考URL http://www2.vc-net.ne.jp/~nausicaa/goshogun/novels.html
キャスト
北条真吾:鈴置洋孝
キリー・ギャグレー:田中秀幸
レミー島田:小山茉美
真田ケン太:松岡洋子
レオナルド・メディチ・ブンドル:塩沢兼人
スーグニ・カットナル:木原正二郎
ヤッター・ラ・ケルナグール:郷里大輔
(タツノコネーミング・・・)
スタッフ
監督:湯山邦彦
脚本:首藤剛志
作画:田中保
放映日時:1981.7.3~1981.12.28
戦国魔神ゴーショーグン

アルプスの少女ハイジ

関西地区で再放送が始まった。最近めっきり昔のアニメの再放送枠がなくなったが、これだけは今も放送され続けている。ランキング番組でも常に上位にあり、日本国民から愛されているアニメといえよう。
カテゴリーが被るが、食べ物の話をしてみたい。
ハイジに出てくる食べ物といえば、あの黒パンとチーズである。ダウンタウンの松本氏も言っていたが、あのパンとチーズは実にうまそうである。だが実際の生活に置き換えてみると、ただのパンとチーズである。黒パンは堅いし、チーズはどこにでもある普通の(ハイジではヤギのチーズだが)チーズである。なぜあんなうまそうに見えるのか。
ハイジ役の声優、杉山佳寿子は、七色の声を持つと言われ、今や大ベテランの声優である。食事のシーンで、黒パンにおじいさんがチーズを乗せると、ハイジが目をきらきらさせて「うわあ」と言うが、その時の声の催眠効果たるや絶大である。このとき、まさにハイジは視聴者の視点と同化する。
加えて、パンの上にチーズが乗ったとき、溶けたチーズがパンの上でゆっくりと動く。些細な効果かもしれないが、アニメーションは動きが遅いほどその表現力を問われる。
黒パンとチーズがうまそうに見えるのは、声優の芝居とアニメーションの表現という、実に単純な、しかし奥深い演出によって成り立っている。
CG全盛の時代、クリエーターを目指している人達には、虚飾という言葉の意味を理解してほしいものだ。
アルプスの少女ハイジ