最後に勝つのは

テレビ番組で漁師さんが出てきた。真っ黒に日焼けして、満面の笑みを浮かべたいかにも漁師という人だ。歳は七十三だという。とてもそうは見えない。
漁師さんみたいにはいかないが、私もカエルの餌を採りに行くときは、さながら猟師のようになる。
草むらを足でかき分け、少しでも動くものを目で追う。獲物を見つけると、手網でさっと掬うのだ。
そろそろ蚊の季節である。目の前を飛んでいく蚊を手で掴む。ぐっと握ってから手を開くと、べちゃっと真っ赤な蚊がそこにいる。こないだなんか、耳元に飛んできた蚊を、首を横へ肩に押し付けて殺したほどだ。
人間、最後に残るのは本能である。近代になって上書きされた知能ではなく、生きるために最低限必要な本能だ。
あてにならない年金など必要ない。老後は狩りをして自給自足でもしようかと、本気で思う。