柳原可奈子

笑わせる芸と笑われる芸は違う。
人に笑われるのはバカでもできるが、人を笑わせるのはそれなりの力が必要だ。
今のテレビに出ている芸人、笑わせる芸も笑われる芸も同じ扱いなのが口惜しい。しかしいずれ、その差は如実に現れることだろう。
あまりに完成された彼女のネタは、笑いを通り越して殺意さえ覚えるときがあるが、全く彼女の想像上のキャラである。
どこにでもいそうで、実はどこにもいないキャラクターを演じる。そう、あのイッセー尾形と同じなのだ。
二十歳そこそこで恐るべき観察力を持ち、しかも時代に迎合しつつ独自の世界を持っている。
流れるように現れては消える芸人の中で、もし芸能界が彼女を見失うようなら、視聴者は業界に見切りをつけるべきであろう。
今年最も注目すべき芸人である。

爆笑レッドカーペット

ネタの時間は短いが、それこそM-1チャンピオンからお前誰やねん的な芸人まで、東西問わずいろんなお笑いを味わえるのは面白い。
その時間が短いというのがミソだ。短いとインパクト重視になるので、多少つまらない芸人でもそこそこ笑いは取れる。
芸人は20分ネタをやって初めて真価が問われるわけだが、そんなことは考えずに楽しもう。
そこで、気になった芸人についてちょっと書き記しておく。
例えばクールポコ、短い時間だから満点こそ取れたが、あれを20分やると辛いものがある。果たしてそれだけのネタがあるかどうかも疑問だ。
にしおかすみこは、野沢直子を思い出す。ちょっと似てるし。エンタに出てそうな芸人だが、キャラありきの東京ではそこそこ重宝されるだろう。
藤崎マーケットは確か大阪だったと思うが、大阪にもとうとうこういう系統の芸人が出てきたということか。
ジャルジャルは、年末のオールザッツでかなり注目された。ネタの着眼点が素晴らしい。
春田和幸は、人のネタを自分のモノマネでやっただけという、非常に卑怯だ。面白いが。
タカダ・コーポレーションの女の子はすごく声がいい。もったいない。
ハイキングウォーキングは、月イチくらいのペースなら見ていたい。不思議なコンビだ。
狩野英孝、いや、けっこう好きだ。我孫子出身というのも泣かせる。TMレボリューションが芸人に特化するとこんな感じになるのだろう。
バカリズムは数多いるお絵かき芸人の中でも、絵ではなくネタがちゃんと前に出ているのがすごい。絵で笑わせず、ちゃんとネタで笑わせているのだ。
特番扱いなので今後放送があるかどうかはわからないが、もっとバラエティに富んだ人選で続けてほしいものだ。

ムーディ勝山

ごっつの名ショートコント、シンガー板尾と比較される向きにあるが、向こうはアドリブ、こちらは予定調和である。
とはいえ、昭和ムード歌謡風の出で立ちや謎めいた歌詞はツッコミどころ満載である。
あまり長生きできるキャラではないと思うのだが、なぜ取り上げたかというと、音楽配信で彼の歌が配信されているのだ。
もちろんアカペラで、しかもフルコーラス(たぶん)なのである。
1曲200円。吉本恐るべしだ。
http://mora.jp/artist/80328115/FDG0038/

R-1ぐらんぷり2007

土肥ポン太
ネタは繰ってきたが独自色は果たして出せていたのか。ポン太ならではのネタの完成が待たれる。
徳井義実
スリランカ人だったのか。卑怯なキャラだがどうしても笑ってしまう。上り調子なのがありありとみてとれる。
大輪教授
笑いは少なかったが、これはこれでありだと思う。キャラとネタのバランスがちょっと。
友近
キャラに頼るな。ネタで勝負しろ。
ウメ
お絵かき系。喋りがいい。ネタもいい。クセになる感じだ。
やまもとまさみ
もう一捻りほしい。ネタとスタイルの確立が急務か。
バカリズム
トツギーノではなかったが、それがかえって懐の深さを感じさせる。
なだぎ武
個人的には大好きだが、お笑いとしてはどうだろうか。物真似の域を出ていない気もしないではない。

優勝:なだぎ武

同点決勝になって、審査員の再投票で優勝が決まったとき、「えっ?」と思わず声を上げた。
と同時に、このグランプリに対する疑念が沸いてきた。
審査員の点数が非公開なのはなぜだろうか。総合得点と、演者一人に対して審査員一人の得点は発表するが、詳細は公表していない。
ということは、裏でいくらでも操作が可能だということだ。
もちろん、そんなことはしていないと思うが、昨年のキャプテン☆ボンバーと新喜劇ボンバーの興行、そして今年のディラン&キャサリンとなだぎの優勝。吉本の大きな力が働いていると邪推したくもなる。
出場規定をピンで活動している芸人に限定するか、カテゴリー分けをするか。
番組を盛り上げるためには何をしてもいいのなら、このR-1ぐらんぷりは有名無実化する。
R-1のR、これが落語のRだということを、果たして何人の視聴者が知っていることだろうか。

R-1前夜

ビデオの予約を忘れないようにしよう。昼までで仕事終わるから見られるかな。

決勝進出者
土肥ポン太(吉本興業 大阪)
徳井義実(吉本興業 大阪)
大輪教授(ケイダッシュステージ)
友近(吉本興業 東京)
ウメ(ソニーミュージックアーティスツ)
やまもとまさみ(マセキ芸能社)
バカリズム(マセキ芸能社)
なだぎ武(吉本興業 大阪)

番組を盛り上げるためには致し方ないとはいえ、純粋にピン芸人でないものがエントリーできるというのはいかがなものだろうか。
カテゴリー分けみたいなものも必要かもしれない。
若干3名ほど知らない芸人がいるが、友近となだぎが出ていることについて、まあ友近はいいとして、なだぎまで出るというのは、やはり吉本の大きな力が働いていると邪推せざるを得ない。
確かにディランは私も大好きだが、昨年、キャプテン☆ボンバーが決勝進出した際、新喜劇ボンバーの宣伝目的のような気がしてならなかった。
現に今年も、ディラン&キャサリンで興行を打っている。まさか友近はキャサリンをもってこないとは思うが。
ネタか、キャラか。これぞピン芸の真髄というものを見せてほしい。

第28回ABCお笑い新人グランプリ

最優秀新人賞:鎌鼬
優秀新人賞:プラスマイナス、いがわゆり蚊
審査員特別賞:恋愛小説家

ネタ見せは後半の組しか見られなかった。今年はほとんど名前の知らないコンビばかりだった。
鎌鼬は何回かネタを見たことがあるが、正直最優秀が獲れるほどのネタは見たことがない。相当出来がよかったのだろう。
エントリーにも若干の問題があるようだ。ちょっと新人過ぎたかもしれない。
化けるとすれば、そこそこルックスのいいピンのいがわゆり蚊だろう。ネタ的には友近風の一人シチュエーションコントだが、声に特徴があるので活かせるようなネタになると面白い。
友近のようにキャラではなく、自分の延長で攻めてみてはどうだろうか。

ディラン&キャサリン

チケぴのプレリザーブから公演の案内が届いた。ディラン&キャサリンで芝居をやるそうだ。残念ながら小学校の同窓会が被って行けないのだが、その後しばらくして、あの熱愛報道が出た。吉本恐るべし。
ディランとは、ザ・プラン9のなだぎ扮する、ビバリーヒルズ青春白書の登場人物で、CVである小杉十郎太の特徴を見事に捉えている。
キャサリンは友近の持ちキャラで、ビバリーヒルズ青春白書とは関係ないが、ディランと絡むにはもってこいだろう。
ディランは新喜劇ボンバーにも登場し、私はそのときにハマった。年末のオールザッツ漫才には二人で登場、周りからいろいろ揶揄されながらコントを披露してくれた。
ただ、一つ気になるのは、二人の掛け合いがほとんど台詞の応酬で浮いたキャラのまま突っ走っていくので、どうやって収拾をつけるのかが疑問である。
ぜひ劇場に見に行きたかったが、25年ぶりの同窓会が相手では仕方ない。
まさか、去年のボンバーのように月イチで興行していくのだろうか。いや、それはそれで嬉しいのだが、んあぁ。