~ワイスペ時代
「ダウンタウンのごっつええ感じ」は、レギュラー放送の前に2度、スペシャル番組として火曜ワイドスペシャルの枠で放送された。これで様子を見て良ければレギュラー化というよくあるパターンである。
ショートコント出演者は、ダウンタウン、今田耕司、YOU、吉田ヒロ、西端弥生、以上はレギュラー化にも残ったメンバーで、ワイスペだけに島田珠代、東野幸治(後にレギュラー参加)が出ている。
コントのスタイルは「夢で逢えたら」を踏襲し、実に簡素なセットで時間も短い。オヤジ、ネクタイ、ベッド、味噌汁、義理人情、などテーマに沿った内容で制作されているため、ハードルが課せられ間口が狭くなっている。
アブノーマルな英語教師コント、エロティカ先生の原型や、大先生(白雲斎)の原型なども登場している。
~レギュラー化
91年12月、ごっつええ感じは日曜20時という最強のゴールデンタイムでレギュラー化された。メンバーは、ダウンタウン、今田耕司、130R(板尾創路、蔵野孝洋)、吉田ヒロ、YOU、西端弥生、篠原涼子、松雪泰子(翌年3月で降板)、伊藤美奈子(翌年3月で降板)。今から考えれば松雪泰子の参加は驚きであるが、彼女の女優生命には何ら影響を及ぼさなかった。
ダンス先生、おかんとマー君、ミラクルエースなど、傑作コントが続出、YOUはミュージシャン色が薄まり、芸人の道を歩み始める。
~ヒロ脱退、山田花子加入
番組中でも度々触れられていたが、東京のプレッシャーに勝てず吉田ヒロが降板、替わって山田花子が加入する。いじられキャラを使ったコントも作られたが定着せず、わずか半年でプロレスラー転向のため降板した。
~不祥事
板尾が不祥事を起こして降板、ほぼ同じ時期に西端も産休で降板する。余談だが旦那は古田新太である。「バビルくんとロデムくん」で人質の西端に対してヨミがそのことに触れている。
板尾の降板により、せっかく課長に昇進した「板尾係長」や「ポチ」などが打ち切られる。
~東野幸治加入、板尾復帰
ワイスペ時代に出演していた東野が復帰した。東野は大きな即戦力となり、「産卵」やキャリー東野など板尾の穴を埋めるに充分な活躍をする。半年の謹慎後、板尾も復帰。復帰第一弾を「シンガー板尾」で飾る。
~女性陣降板
その直前から涼子は既にショートコントに出なくなっていた。思うに、「くらピー」で蔵野に無理矢理キスをされたせいではないだろうか。他にも同じシチュエーションのコントで板尾や東野にも唇を奪われそうになっている。
YOUもこの頃妊娠しており、これでメンバーから女性陣が消えることとなる。
~そして突然
予感は漠然とあった。コントが投げやり、おざなりになり、深みや広がりがなくなった。テレビ局の理不尽な力関係の煽りを受けて、ごっつええ感じは打ち切りが決定した。
数々のショートコント、数々のキャラクターを世に送り出したごっつええ感じ。それはおそらく永遠に他の追随を許さないだろう。次回から、その名作ショートコントの数々を振り返っていきたい。
カテゴリー: お笑い
たけし・志村史上最強の爆笑スペシャル
問題点が二つある。まずネタが古過ぎる。あの頃を懐かしむ懐古的コントならやるだけムダ。もう一つ、コントがどうしてもドリフベースになるので、たけしは志村のつっこみにならざるを得ない。そうなれば、コントでのたけしの存在意義はなきに等しい。
コントは志村のフィールド。たけしは言わばアウェイである。コントに組み入れるなら、たけしを中軸にして志村が絡むというスタンスでないといけない。
つまり、この番組は共演させてはいけないお笑いの神二人を共演させてしまった。
太陽は二つもいらない。私に言わせれば史上最悪であった。
Wヤング
空前の漫才ブームで活躍した若手漫才師たちが目標としていたのが、希代の天才漫才師Wヤングであった。数々のギャグやテンポのいい舞台は、ビートたけしをもってして勝てないと言わしめたほどであった。
しかし、中田治雄が79年に福井・東尋坊で飛び込み自殺を図り、Wヤングは伝説となった、はずであった。
残った平川幸雄は、吉本新喜劇座員の佐藤武志を誘い、新生Wヤングとして再スタートした。それから二十余年。私は改めてその技量に驚愕した。
間、息、テンポ、全てが完璧に噛みあったしゃべくり。平川はすでに齢六十をとうに越えているはずだが、舞台狭しと走りまくり、強烈などつきをかます。喋って笑わし、動いて笑わし、客をいじり、相方をいじり。正直、私のお笑いの中にWヤングというコンビが今まで欠けていたことを恥ずかしいと思った。
相方や弟子を悲劇的な形で失った平川だが、新しい相方とのWヤングがようやく呪縛から解き放たれようとしている。ヤングというには程遠い二人だが、この大ベテランのこれからに注目である。
三菱グループの隠蔽体質
三菱自動車のリコール隠し、三菱地所の環境汚染隠蔽に続き、三菱グループのその歴史上最大の隠蔽が発覚した。
実は三菱は・・・
第35回NHK上方漫才コンテスト
最優秀賞:レギュラー
優秀賞:千鳥、つばさ・きよし
レギュラーは、あるある探検隊を封印しての優勝。知名度も上がってきたので、そろそろか。
千鳥も順当に力をつけてきている。しかし、何か物足りない。せっかく勢いが出てきたので、このまま行ってほしい。
つばさ・きよしは初めて見聞きしたが、技は確かにあるものの、花がない。調べてみると、二人とも師匠持ちであった。大木つばさ、ぼんちきよし。それぞれ誰が師匠かわかるだろう。今後に注目である。
以前にも触れたが、大阪NHKのコンテストは非常に保守的な審査である。保守的というのは、しゃべくり漫才を重要視し、コントものや構成の変わったネタを嫌う傾向がある。南海キャンディーズ、イシバシハザマはかなり客席のウケもよかったが、優秀賞には食い込めなかった。
レギュラーは奇異な構成だが、ダントツに面白かったのは確かである。優勝賞二組がしゃべくり漫才だったことが、その保守的な審査を如実に表している。
しゃべくり漫才の伝統を保つのも重要だが、もう少し審査員の顔ぶれを改めてほしいものだ。まあ、それがNHKであるといえばそうなのだが。
「どエンゼル」は21世紀のごっつになれるか
ショートコントは、ごっつ以上のものはもうできないと思っている。ごっつ以上のものを作るには、ダウンタウンを超える芸人、三木聡、倉本美津留を超える作家が必要である。そして、それは不可能である。
関西ローカルではあるが、土曜日の深夜に「空想科学番組どエンゼル」というのがある。製作元である読売テレビのウェブサイトに全くページが存在しないという(どういうこっちゃ?)番組だが、テレビ欄の番組紹介にショートコントとあったので観てみた。
笑い飯、板尾創路、YOU、キタキマユ、古田新太と錚々たるメンバーである。で、構成作家が倉本美津留である。音楽に重きを置いた構成で、各パートが一応連続した形でつながっている。随所にはアニメーションも入り、私はふとモンティパイソンが浮かんだ。
キャラクターに依存せず、ネタで勝負しているところはかなり強気の姿勢である。はねトびが今一つ伸びていないのも、東京ローカルから全国ネットへ移行したときに、ショートコントがキャラクター依存だったため、新規の視聴者をおいてきぼりにしたからだ。私もその一人である。
笑い飯の実力は推して知るべしで、ショートコントはまだまだやらされてる感が否めないが、主導権を握ればダウンタウンに匹敵するパワーを秘めている。板尾は最強のバイプレーヤーであり、ブレーンとしてもこれ以上のサポートはないだろう。YOUもまた同じである。ダウンタウンに鍛えられ、芸人のスキルとしてはもう中堅クラスである。ただ、スケジュールの都合か私の観た回は別撮りであった。笑い飯との絡みを観てみたいところである。
キタキマユは、私も誰やあれ?といった感じだったが、ごっつの篠原涼子のポジションに似ている。花王ロリエのCMにも出ていた、髪の長い女の子である。実はれっきとしたシンガーであり(意外)、もしこのまま軌道に乗ればYOUのポジションになる。ま、そこはほどほどに。
我が大学の偉大な先輩古田新太は、私が観た回はたった1カットの出演だった。もちろん、芝居も笑いも超一級なので(褒め過ぎか)、ショートコントでは絶大なサポートとなる。
倉本氏はご自身でも音楽を制作されていて、どエンゼルではそれが色濃く反映されている。キタキマユの起用はその辺りを睨んだものであろう。また、アニメーションもシュールで、インターバル的に流れていいアクセントになっている。
現基礎、ぶっといなど、読売テレビで伝説の深夜番組を手掛けてきた倉本美津留。新たに笑い飯というパートナーを得て、「どエンゼル」はその伝説に成りうるのか、そして、あのごっつを超える存在になるのか。関西の土曜深夜に注目である。ちなみに今週は野球でお休み。
R-1ぐらんぷり・ヒロシの大失敗
彼が舞台に出てきた瞬間、観客と視聴者のほとんどは、あれ?と思ったはずだ。あの耳慣れたBGMが聞こえてこない。いつもは斜に構えてうつむき加減の彼が、胸を張って正面を見ている。
こんな大舞台で新ネタかけるか、普通。
百歩譲ってその度胸は褒めよう。しかし、確実な結果が要求されるコンテストで、新ネタをかけるというのは暴挙に等しい。おまけにその反応を察知したのか、一発目のネタで噛む始末。その瞬間、私は終ったと思った。
審査員の伊東四朗氏もおっしゃっていたが、みんなあの「ヒロシです」を待っていた。確かに新ネタは期待していたが、スタイルまで新ネタにすることはなかったはずだ。
マンネリを怖がるのはわかる。だが、みんなはまだ飽きる程君を見ていない。君が思う程、あのスタイルはまだ定着していないのだ。
仮に客が飽きたとして、それでも客は「ヒロシです」の一言を待っている。ダンディ坂野が幾ら飽きられても、彼が「ゲッツ」をやらない舞台はない。テツandトモが幾ら飽きられても、そのネタから「なんでだろう」が消えるはずはない。チャンバラトリオがハリセンを捨てないように、横山ホットブラザーズがノコギリを捨てないように(たまにやらん舞台あるけどね)、君はずっと「ヒロシです」を言い続けなければならないのだ。
それがヒロシという芸人なのである。もっともっと頑張れ。