菊乃井の犬

墓参りの道すがらに、菊乃井という京料理屋がある。
春秋の彼岸、盆と通るたびに会うのが、そこで飼われている犬だ。
特段かわいい犬ではないが、たぶん住み込みの板前さんたちにかわいがられているのだろう、かなり人懐こい。墓参りに行くたびに、犬元気かなと楽しみにしているほどだ。
しかしもう10年以上15年近くになるので、今ではかなり高齢である。最近では、まだいるかなとだんだん心配になってきた。
春の彼岸のときなど、いつもいる玄関先に姿がないので、とうとう死んだかと意気消沈していると、何やら吠える声がする。探してみると、駐車している車の奥の、日の当たる暖かいところにつながれていて、ここにいるぞと言わんばかりに我々を見て吠えていたのだ。
秋の彼岸は、まるで真夏のようなクソ暑さで、犬は玄関先にいてくれたがかなりしんどそうだ。
寝ているところを撮ろうとした瞬間、起き上がってくれた。
また来るからな。ええもん食わしてもらえよ。なんせ菊乃井やからな。