大阪の小劇場事情

年に数回とはいえ、芝居を観に行くようになると、大阪にいかに劇場が少ないかがわかる。
関西小劇場のメッカと呼ばれたOMSは閉鎖、そのOMSと公演数を二分していた近鉄小劇場も閉鎖になった。近鉄は球団といい劇場といい、関西の文化発展に寄与するどころかどんどん足を引っ張っている。企業として何らかのペナルティは科してしかるべきだ。
以前、某女優さんの個人サイトのBBSに、もっと大阪に来てください、と書き込んだところ、地方公演は打てば打つほど赤字になるとおっしゃっていた。
確かに、劇団員や装置の移動経費はそのまま売り上げから消えるわけで、本拠地公演と比べると利益率は下がる。地方公演に腰が重いのも当然だ。おまけに、効率よく集客できる劇場が減っている現状では、尚更やりにくいだろう。
財政危機がマジでやばい大阪市も、一応この状況はまずいと考えているらしく、難波のど真ん中にある小学校跡を小劇場としてオープンさせた。まだオープンしたばかりだが、立地は絶好なのでこれからに期待が持てる(精華小劇場)。
さて、毎年本当に楽しみにしているシティボーイズだが、今年は絶好の席が確保できた。最近だんだん視力が落ちてきて、乱視もかなりひどくなってきたので、今年こそはまともに観劇できることと期待している。

竹中直人の会改メ、竹中直人の匙かげん1「唐辛子なあいつはダンプカー!」

せっかくの竹中さんの芝居なのだが、テンションが低かったのは正直なところである。会場はシアタードラマシティ、シティボーイズで何度も行っているので、どの席からどう見えるかは大体わかる。今回は、20列3番。なんと、思いっきり左端である。しかも20列といえば、後ろから数えたほうが早い。こんな位置から、何が見えるというのだろうか。
案の定、演者の顔は全く見えず、舞台全体は見渡せたが、茶褐色坊主の竹中さん以外、女優陣でさえ誰が誰かわからなかった。
冒頭、上手客席あたりで竹中さんと木村佳乃らしき人が走り回る。ああ、シティボーイズならいつもあの辺なのに。
とはいえ、お笑い全開の竹中さんを生で観られたのは嬉しかった。ショスタコビッチ三郎太や、ナンの男まで登場した。佐藤康恵もモデルやクラシックバレエをやっていただけあって、所作も決まっていたしスタイルもよかった。それだけに、前で観られなかったのは残念だ。
竹中直人の会は普通の真面目な芝居だった。今回はタイトル通り、お笑い路線で来るのはわかっていたが、どういう構成になるのかは全く予想できなかった。蓋を開けてみれば、ミュージカル仕立てであった。生バンドが上手後方に板付で、竹中さんはもちろん、佳乃ちゃんや他のメンバーも歌いまくる。
竹中直人フリークにはたまらない舞台だったが、席位置以上に何か釈然としないものがあった。次はどうするんだろうという不安である。
今回と同じものをやっても仕方ない。もちろんお笑いには期待するが、匙かげん2では何を見せてくれるのだろうか。
とりあえず、次はもっと前で観たい。
Jan.8,2005 大阪・シアタードラマシティ

イッセー尾形のとまらない生活2004IN京都

2年ぶりの京都公演である。前回、私は初めて生の舞台を観させていただいた。長い間憧れていたイッセー尾形の舞台である。今回で都合三回目の鑑賞となるが、なんと最前列!たっぷりと楽しませてもらった。
演題は勝手に付けさせていただく。

「単身赴任」単身赴任が決まった中間管理職サラリーマン。独りの生活をあれこれ思い描く。
初期の頃の作品。ビデオで何度観たことか。時事ネタが各部に入り、オチは完全に変わっていた。

「真夜中の引越屋」とあるマンションに一人で派遣された引越屋の若者。謎めいた引越の荷物とは。そしてその引越の理由とは。
いろんな作品を観てきたが、死人が出てきたネタは初めてである。ちょっとびっくりした。イッセーさんにしてはダークでシュールな作品。

「夫婦の秘密」リゾート地へのパック旅行。ホテルのベランダで、若い夫婦が互いの秘密に迫る。
前のネタに続いてバカキャラもの。ネタの展開が楽しめた。設定が少し強引かも。

「サラリーマン親子」新社会人となった息子と飲む父親。しかし、息子は仕事を辞め、スペインへ行くと言い出す。父親と同じ人生を歩みたくないという息子に父は・・・。
お得意の初老サラリーマンネタ。この年代のサラリーマンの悲哀は、イッセー尾形の真骨頂であろう。

「最期のスーツ」寂れた仕立て屋に久しぶりの客が。棺桶に入るときに着るスーツを作ってくれという客に店の主人は張り切るが・・・。
プロットが巧みなネタ。静かな演技もさすがである。やはり最前列は所作や表情が細かいところまで観られるのでいい。

「クラシックの夕べ」幼稚園の卒園式の余興に呼ばれた妙齢の弦楽四重奏楽団。他のメンバーがまだ来ないので、一人で幼稚園生相手についつい・・・。
トリの歌ネタ。どうも新作らしい。そういえば本日初の女装。チェロでいろんな効果音を出して話を進めるが、実に器用な人である。”おーまえーはーあーほーか”があると関西では3倍受けるだろう。

京都公演後、すぐにロシアのほうへ旅立たれるとか。テロが続いているのでちょっと心配であるが、こればかりは気をつけてもどうにもならない。無事帰国されることを祈り、また来年、京都か大阪で舞台を拝見したい。
Sept.3,2004 京都府立文化芸術会館

シティボーイズ 「だめな人の前をメザシを持って移動中」

ブログには間に合わなかったが、演劇カテゴリーが寂しいので記事を置いておく。
今年で観るのは三回目、春もGWも終わったこの時期にいつも観るので、季節感が一致してきたと思いきや、今年はえらく蒸し暑く、しかも大雨。おまけに休みを取らずに仕事終わりで行ったものだからどうにも落ち着かない。
とりあえず、いつものオムライスで腹ごしらえをしてから劇場へ。一応、今までで列としては前だが、一番右端。しかも、開演してから意外な落とし穴が。
ああいう大きな劇場の席配置は、気を利かして互い違いの列になっている。前の人の肩と肩の隙間から見えるように。しかし、それは舞台を正面に見てのこと。舞台を斜めから見る端の席では、舞台は肩と肩の隙間の方向にはない。その辺り、新しい劇場を建てる際には一考していただきたい。
そんなこんなで、やや消化不良な舞台ではあったが、そこはシティボーイズ、いつものようにたっぷりと笑わせてくれた。一番のお気に入りは、斉木氏の20万円の演技である。斉木氏の一人芝居は、いつも楽しませてくれる。一昨年「パパ・センプリチータ」のエスプレッソ王子のときには、死ぬかと思うほど笑わせられた。
客演のチョップリンは、大竹氏が気に入って連れてきたらしいが、正直なところ、今一つであった。それはシティボーイズのレベルで考えてという意味であり、チョップリンが今一つというわけではない。いい勉強になったと思うので、精進してレベルを合わせてまた出てきて欲しい。
年々、過激なネタが減ってきているのは少々気にかかる。思想ネタや差別ネタも皆無で、シティボーイズも歳を取ったというところか。ラジカルさも売りの一つだったので、いずれまた見せてほしいものだ。
来年もまた、ぜひ。
May.13,2004 大阪:シアタードラマシティ

映画もいいけど芝居もね

正直、ぶっちゃけて言うと、演劇は敷居が高い。映画みたいにふらっと観られないし、料金もやはり高い。劇場が東京一極集中であるのも一因だ。
しかし、映画と圧倒的に違うのは、あのライヴ感である。目の前の出来事は、その目の前で行われている。あの感覚は、一度味わうと病み付きになる。
私が今まで観てきたのは、シティボーイズ、イッセー尾形、ナイロン100℃、竹中直人の会である。シティボーイズはずっとWOWOWで観てきて、ようやく2002年に念願の生舞台を鑑賞できた。このときの感動は今でも忘れられない。まさに夢にまでみたシティボーイズの舞台が目の前で行われているのだ。もちろん、それから毎年観に行っている。
夢にまでみたといえば、イッセー尾形もそうであった。学生時代からずっとビデオやテレビでしか見られなかったが、初めて舞台を観たときは、本当に身体が痺れた。また9月に、今度は最前列で観られるので、そのときにはまたこのブログで報告させていただく。
ナイロン100℃は、松永玲子という女優が前から少し気になっていたところ、シティボーイズの客演で同劇団の犬山犬子が公演の宣伝をしていたので観に行った。その公演は全体公演ではなく、ナイロン100℃の女優4人での芝居だったが、これが実によかった。なかなか全体公演で地方にまで来てくれないが、せめて大阪に来てくれればぜひまた行きたい。
竹中直人の会は、毎年公演を行っている演劇ユニットで、竹中氏も私が信奉している一人である。ただ、どちらかと言えばお笑い系ばかり観ているので、純粋な芝居を舞台で観るというのは、少々疲れるということがわかった。
東京は大丈夫だが、こちらでは相次いで劇場が閉鎖されている。場所がなければ、観たいと思ってもどうしようもない。ましてや、小劇団の地方公演というのは、自らの首を絞めるほど経済的に厳しいそうだ。
お笑いという舞台が充実している関西地区では、一般劇団の公演は興味の対象として薄れがちであることは否めない。しかし、小劇場のムーブメントは、確か関西から起こったはずだ。私もできる限りのことをしていきたいし、観客サイドから劇場復興に向けてのアクションを起こすことは、演劇という文化のためにも必要である。
あまり更新の頻度はないと思うが、このカテゴリーにも注目していただければ幸いである。