NHKのみんなのうたはみなさんもご存知かと思う。私は「北風小僧の寒太郎」が大好きなのだが、なぜかあの歌を聴くと涙がこみ上げてくる。悲しいわけでもないのだが、楽しい歌の中にもどこか冬の物悲しさや、郷愁が隠れているのだろう。マチャアキもいいが、やはりあの歌はサブちゃんバージョンがいい。
アンナ・バナナも、初めて聴いたのはみんなのうたである。「smile」という曲が耳に残り、CD屋でアルバムを手に取ると、田島貴男がプロデュースしているとある。ピチカート時代から、曲調は好きだがどうも男ヴォーカルなのが引っ掛かっていて、女性ヴォーカルの田島貴男の曲が聴きたいと思っていたところだった。
夏をテーマにしたサウンドは、それらしく作り込んであるものの、ストレートなイメージは感じられない。海は近くにあるんだけど見えない、しかし確かに今は夏、みたいな感じに仕上がっている。
アンナ・バナナのヴォーカルは、夏の空気感だけをたっぷりと含んで、田島の曲を歌い上げている。これがもし田島自身のヴォーカルなら、じとっと汗がにじむところだ。まさに「High Dive」。水飛沫が顔に跳ねるようなサウンドである。
よく晴れた夏の日、オープンカーで海沿いの道を走りながら、また来年にでも聴いていただきたい。
SXCR-604 SIXTY 19930623
カテゴリー: 音楽
かの香織 「裸であいましょう」
守口にいたころ、FM大阪にせっせとリクエストを送っていた時期があった。毎日送るもんだから、ほぼ毎日紹介され、たまに曲もかけてもらえた。akikoの「crazy about you」をFM大阪で最初にかけさせたのは私のリクエストである。
その頃ハマっていたのがかの香織であった。
ショコラータのヴォーカルとしてデビュー、解散後ソロとして活動し、FM局で注目を浴びる。私もその一翼を担っている、ということにしておきたい。
なんといってもその魅力は声である。歌声もさることながら、話し声も非常に魅力的である。官能的とまではいかないが、やや鼻にかかった感じで、破裂音と摩擦音のアクセントがきれいに整っている。故に、CDでは邪魔者扱いされているリップノイズやブレスノイズを活かした生身のヴォーカルを聴くことができる。
アルバムの楽曲も、ヴォーカルを前面に出したものが多く、かの香織の魅力満載の一枚と言えるだろう。
年内に久々のアルバムが発売予定である。
かの香織 公式ウェブサイト http://www.caolina.net/
SRCL3301 SONY 19950901
THE PRIMITIVES 「Lovely」
ちらっとMTVか何かでビデオを観て、最後に出るアーティスト名のテロップを書きとめてレコード屋へ探しに行ったのを覚えている。それほどプリミティヴズは衝撃的でもあった。
今で言うGARBAGEとかあの辺のサウンドに近いだろうか。GARBAGEよりはポップでパンチもそれほど効いてないが、ちょっとパンキッシュな3分ポップというところか。
トップチューンがその必死でメモした「Crash」。サウンドは実にシンプルだが、トレーシーの悩ましいヴォーカルが厚みを加えている。
比較的世間の受けもよかったようで、都合3枚のアルバムをリリースしている。私も何をトチ狂ったのか、「Lazy 86-88」というデビュー以前の音源を集めたアルバムも買ったりなんかしている。何十年か経って、プリミティヴズが再評価されたりなんかすれば、プレミアになるだろうか。
The Primitives 公式ウェブサイト http://www.crashsite.org/
8443-2-R BMG 1988
FLIPPER'S GUITER 「THREE CHEERS FOR OUR SIDE」
Lolipop Sonicとしてロンドンで活動中、サロンミュージック(POP ACADEMYさん曰く、渋谷系の黒幕)に見いだされてFlipper's Guitarとしてデビューした。小山田圭吾と小沢健二、二人の天才が組んだ今や伝説的なバンドである。
ネオ・アコースティックがどうこうというより、何を置いてもシングルの「フレンズ・アゲイン」である。あの佐々木麻美子がゲストヴォーカルとして参加しているのだ。飛びつかないわけがない。しかし、よくよく聴いてみると、佐々木麻美子が参加するくらいだから、ピチカートファイヴと共通点が何かしらあるということであって、後に小山田圭吾がピチカートのアルバムをプロデュースしたりもしている。
ほとんどが英語詞というこのアルバムは、活動の拠点をロンドンに置いていた名残であろう。小山田のヴォーカルは細くて頼りなげだが、青臭い若さがにじみ出ていて、華奢に思えるサウンドはフェイクであることがわかる。
解散後、先に小山田がコーネリアスとしてソロデビュー、遅れて小沢健二もデビューして、女の子の黄色い声援を浴びた。解散直後は、小沢のステージングに不安の声もあったが、ヒットチャートを賑わせたのは小沢のほうであった。小山田はピチカートファイヴやカヒミ・カリィのプロデュース、自身のレーベル”トラットリア”を立ち上げるなどして、幅広い活動を繰り広げた。
二人の天才はその手腕を様々に発揮して、音楽界に新たな波を引き起こした。今後また何を仕掛けて来るのか、楽しみである。
小山田圭吾 公式ウェブサイト http://www.cornelius-sound.com/
小沢健二 公式ウェブサイト http://www.toshiba-emi.co.jp/ozawa/(休止中?)
H30R-10004 POLYSTAR 19890825
GO WEST 「INDIAN SUMMER」
「What You Won't Do For Love」という曲をMTVで観て気に入った。しっとりと落ち着いた曲調の中にも熱いものがある、大人の音だなと思った。しばらくして、その曲がAORの大御所、ボビー・コールドウェルのカヴァーであることを知った。そりゃ大人だわ。
INDIAN SUMMERとは、日本でいう小春日和の意味で、秋や初冬に夏が戻ったかのように暑くなる日のことである。夏が過ぎてしばらくしたある日に、あの夏のような暑さがやってきて、あの夏の出来事を思い出す。アルバムもそんな感じのサウンドである。
サックスのソロがメロウに響く「Still In Love」、トリッキーなカッティングギターで始まるダンサブルな「That's What Love Can Do」、コールドウェルよりずっと大人のサウンド「What You Won't Do For Love」、よくよく聴けば槙原チックな「Forget That Girl」。
10年以上経った今でも、充分楽しめるアルバムである。
GO WEST 公式ウェブサイト http://gowest.homestead.com/
CDCHR1964 CHRYSALIS 1992
FAIR CHILD 「FLOWER BURGER」
フェアチャイルドは、Shi-Shonen解散後に戸田誠司が結成したユニット。YOUはShi-Shonen末期にメンバーだったらしい。今やすっかりお笑い芸人になってしまったが、昔はほんとに可愛かった。
Shi-Shonenのテクノフレーヴァーを残しつつ、ガールポップとして完成したフェアチャイルドは、アイドル上がりのYOUをフロントに、サウンドメーカーの戸田誠司、川口浩和のハードなギターがいいアクセントとなって、ライヴステージでも絶大な人気を誇った。なんといっても最大の魅力は、YOUの高音ヴォーカルにある。
フレンチロリータまではいかないが、少し鼻にかかったような声は、高音部の伸びが素晴らしい。この声でハードなナンバーからスローナンバーまでこなす。
しかしこのバンドも多分に漏れずバンド仲が悪く、川口氏が飲み屋で戸田氏をぶん殴って解散したそうだ(YOU談)。解散後、戸田誠司はサウンドプロデューサーとして、YOUはソロデビューしたがお笑いの世界に引きずりこまれた。川口氏は、どうやら行方不明のようである。
戸田誠司 公式ウェブサイト http://www.thereshegoes.jp/
D32A0424 TENT 19890321
ADVANTAGE LUCY 「ファンファーレ」
手持ちのCDで比較的新しい部類になる。最初に聴いたのは「シトラス」だったが、牧歌的というか、実にナチュラルでストレートに心に響くサウンドであった。アイコのヴォーカルも素直で気持ちのいい声である。
アルバムを通して聴くと、スウェディッシュポップの色がなんとなく感じられた。サウンドはシンプルだが深みがあり、アイコはルーシーのアイデンティティたりえる伸び伸びとしたいい声である。
「カタクリの花」のようなしっとりした曲から、「Smile Again」のような楽しい曲まで、ライヴを中心に力を付けてきたバンドだけあって、偏りのないサウンドメイクはなかなかである。
しかし、セカンドアルバム発売直前に、ギターの福村貴行が脱退、彼は事実上ルーシーの要であったため、バンド活動は以降収束していく。そして昨年11月、彼は持病が悪化し、亡くなってしまった。この記事を書くにあたって、初めて私はその訃報に接した。
今でも元気にルーシーは活動中であるが、そのことがなにより嬉しい。
advantage lucy 公式サイト http://www006.upp.so-net.ne.jp/advantageLucy/
TOCT-24128 EASTWORLD 19990512