MTJ #9

「Just a Woman」マリーン
マリーン扮するやり手のキャリアウーマンが、成り上がりの若い副社長に目をつけられて誘われるが、彼女はことごとくそれを振り払う、みたいなストーリー。待ち合わせたバーで、実は彼女が歌っているのだが、副社長はそれを知らないというオチ。アップテンポでノリのいい、好きな曲である。「私はただの女じゃないの」みたいな詞も女性上位時代を表している。

「鉄カブトの女」パール兄弟
パール兄弟-手塚真の真骨頂たるビデオである。モノクロ、8mm、エログロナンセンスと、手塚節全開。アジテーションラップと言う曲のスタイルだと、確か近田春夫氏が言っていたような気がする。夜中に一人でヘッドフォンで聞いていると、ついつい後ろを振り返りたくなるパール兄弟最強のビデオクリップである。

「Red Zone」The Star Club
その筋では有名なパンクバンドだが、映像がよかった。シネカリグラフやコマ撮り、多重露光の合成など、フィルムでできるエフェクトを多用して、かっこよく仕上がっている。イメージ優先の演出としてはかなり完成度が高いように思う。

「Friday Night」The Jadoes
サウンドはそうでもなかったが、ビデオはかなりふざけていた。どうも普通のバンドではなく、お笑いとしても活躍していたようだ。だが調べてみると、メンバーの中に、現在ダンス☆マンとして活動している人がいるらしい。どっちつかずになってしまったのは残念だ。ビデオ中、曲をスクラッチみたいに細かく同じフレーズを繰り返すところで、編集ではなく自分の動きでそれをやってしまう(見てもらったほうが早いよ)のが死ぬほどおかしかった。

芸能マネージャーは大変だ

どんな仕事も大変だが、芸能マネージャーも大変な仕事である。
タレントのスケジュール管理はもとより、タレントがスムーズに仕事ができるようにあらゆる点に気を配らなければならない。プロデューサーに頭を下げ、ディレクターに頭を下げ、フロアで頭を下げ、サブで頭を下げ、タレントを番組で使ってもらうように挨拶は欠かせない。
時には、タレントと事務所の間に立って、タレントの愚痴をなだめることもある。タレントのメンタルケアも任されているのだ。
タレントがテレビ局やスタジオで仕事をしているときは、カメラの後ろで見ながら、ときには目配せで合図したり、いろいろとフォローしなければならない。
どんなに仕事が辛くても、本番中にタレントほったらかしでロビーにコーヒーを飲みにいって、初めて顔を合わせた同じ事務所の先輩タレントに名刺も出さず礼儀もわきまえず馴れ馴れしく話しかけて、挙句の果てにその先輩タレントをキレさせてぼこぼこに殴られて、警察へ被害届出してその先輩タレントを告訴して事務所に大損害を与えた上に、まだその事務所で働こうという自己中心的な考えを押し切るようなことは、あってはならない。
え、あったの?あらま。

機甲創世記モスピーダ

ブライガー、アクロバンチと並んで、金田オープニング3部作と呼ばれて(?)いるのがモスピーダである。ノリのいい曲とともに、金田節全開の作画がスピーディに展開する。
モスピーダは音楽制作に比較的力を入れており、OP、EDや挿入歌はなかなか聴き応えがあった。特にエンディングはテレビアニメ史上初のブルースであり、私も好きな曲の一つである。
劇中に登場するライドアーマーは、バイクが変形してパワードスーツのようになるのだが、理にかなった無理のない変形をしており、なかなか素晴らしいギミックである。バイクが変形してロボットになるというのは、恐らく変形メカとしてはあまり例がない。当時、ちょうどバイクに興味が出てくる年頃だったので、アニメファンでなくてもこの番組を観ている友人は多かった。
ただ、この作品も残念ながら低視聴率のため2クールで打ち切り、ハードSFな舞台設定を活かしきることができなかった。しかし、アメリカでは「ROBOTECH」として再制作され、かなりの人気を博したようだ。

芳本美代子 「I'M THE ONE」

ザ・ベストテンで最高位2位を獲得した「青い靴」が発売されたのが前年の86年。このアルバムは、アイドル歌手芳本美代子として最高の時期に発売されたと言える。
シングル曲を含めた一見何の変哲もないような構成のアルバムだが、暗雲を振り払うような爽快なトップチューン「Kiss the Sky」から、異国情緒漂う「フェリアの娘」、ハイテンポなリズムトラックで盛り上がる「Street Swimming」、ラストはちょっと大人っぽく「Wanna Catch」でメロウに決めてくれる。
飛びぬけてかわいくもなく、飛びぬけて歌がうまいわけでもないが、みっちょんは私にとって永遠のアイドルである。
TL-515 TEICHIKU 19870721

MTJ #8

「Right Place Wrong Time」F.O.E.
YMO散開後、細野晴臣が次のムーブメントを起こすべく結成したF.O.E.(Friends Of Earth)。当然YMO世代は注目したが、尻切れた感じになってしまった。ビデオもライブ映像が中心であまり凝っていない。むしろ「Strange Love」のほうが映像としては凝っている(なら取り上げろよ)。

「黄金の時間」ZELDA
ガールズバンドの祖と言ってもいいだろう。映画「ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け」の主題歌で、ビデオも映画からの映像がふんだんに使われている。今から思えば、いわゆるゴスロリ調の衣装を着ていたように思う。音楽的にも実力を備えたバンドであったが、下に強力なガールズバンドが出てくる。

「KISSでCRIME」プリンセスプリンセス
ガールズバンドの代名詞になってしまったプリプリ。しかし、彼女達もいきなりうまかったわけではない。このビデオを見ると、その一生懸命さというか、必死さが伝わってくる。正直、かわいいとかきれいなバンドではなかったが、魅力的ではあったと思う。プリプリとしてのデビューはこの曲である。

「失意のダウンタウン」久保田利伸
ラップを取り入れた楽曲で、日本で初めてヒットしたのはこの曲ではないだろうか。全編ではないが、間奏部分に挟まれている。若々しいデビュー曲である。既にもうコンポーザーとしての一面もあり、多彩な才能を発揮していた。そしてとうとう全米デビューを経てソウルトレイン出演である。すごい。日本の音楽界において、R&Bシンガーという系統を築いたミュージシャンと言えるだろう。

「江戸時代の恋人達」パール兄弟
手塚真が撮ったと聞いて、見ない訳にはいかない。お茶の子博士で散々楽しませてくれて、今度はどんな映像が見られるのだろうかと。だが私は映像より音楽にはまってしまった。パール兄弟との出会いである。ビデオは、股旅姿のメンバーが砂浜で歌う。もちろん8mm。ざらっとした画質は見慣れたいつものやつだ。手塚真-パール兄弟の真の姿は、「鉄カブトの女」までおあずけである。

ポジショニング

面白ければテレビに出られるか、答えはノーである。
何度も言うが、芸人の本分は舞台である。が、これだけ無料で観られるテレビが発達してしまえば、活躍の場をテレビに置かざるを得ない。
笑いという己の芸の成果をストレートに受け取れる舞台と違って、テレビのそれは反応が実にわかりにくい。自分の意図に反して、テロップや編集などをされてしまうこともある。となるとテレビの方が難しいように思うが、面白くなくてもテレビには出られるのだ。それには、ポジションというものが重要である。
青木さやかがバラエティで活躍しているのも、そのポジショニングに当てはまったからである(彼女が面白くないとは言っていない)。毒舌の女性芸人という、長い間空白になっていたポジションに、青木さやかは収まったのだ。
長年女性に嫌われている出川哲朗がテレビに出続けているのも、嫌われキャラというポジションを彼が獲得しているからである。同じく、ダチョウ倶楽部の上島竜平も、ヨゴレ芸人というポジションを獲得している。
最近、安田大サーカスが注目を浴びているが、彼らはかつてのダチョウ倶楽部のポジションに収まろうとしている。出オチ、ヨゴレ、キャラクターにも個性があるので、今後の活躍に期待が持てるが、かなり仕事的にも厳しいポジションなので、身体を壊さないようにしてほしい。
ポジションを得たからといって、そのポジションを維持できるかといえば、これまたそうではない。それには、他の芸人との絡みが必要になってくる。
コンビ芸人はボケとツッコミのスキルを活かし、MCから振られればボケ、MCがボケればツッコむ。ピン芸人は持ちギャグやトークのスキルを活かし、MCとのタイマンで勝負する。
ギター侍は、その点かなり厳しいものがある。ピン芸人はもともと話術があるので絡みやすいが、彼は音楽ネタなのでその類ではない。それに、エンタの神様というバイアスとテロップの助けがあってこそ、という感じがまだまだあるので、早くその呪縛を解いて独り立ちしていってくれることを望む。
芸人が、ネタ見せだけで食える時代では、残念ながらなくなってきた。もはやテレビは必要不可欠である。だがしつこいようだが、芸人の本分は舞台である。目の前の客が笑わないのに、電波の向こうの視聴者が笑うわけがない。面白くなくてもテレビには出られるが、舞台に上がるのは面白い芸人だけである。舞台とテレビ、この似て非なるものを制することによって、芸人は天下を獲ることができるのだ。

PSY・S 「TWO HEARTS」

フェアライトを操るテクノの申し子松浦雅也と、パワフルでキュートなヴォーカルCHAKAが85年に結成したユニットPSY・Sは、デビュー以来数々のスマッシュヒットを飛ばし続けた。これは初のベストアルバムである。
当時、他に追いかけるミュージシャンが多かったため、サイズはベストでいいやと思っていたが、各店で品切れが続出、手に入れたのは発売から相当経ってからだった。みんな同じことを考えていたのだろう。
収録曲は全てリミックスが加えられ、オリジナルに似たものもあれば遠くかけ離れたものもある。どれもオリジナルより生っぽい印象がある。賛否はあれど、サイズサウンドを充分堪能できるアルバムには違いない。学生の頃、寮の部屋でよく聞いていたので、今でもサイズを聞くとあの頃の甘酸っぱい気持ちが呼び起こされる。
“Desert”はオリジナルのほうが好きだったと言ったあの人は、今頃どこでどうしているのだろう(しみじみ
SRCL1791 SONY 19910425