MTJ #7

「STAY CLOSE」高橋幸宏&Steve Jansen
JAPANとYMOは親交も深く、こういうコラボレーションが出て来るのは自然な形である。ビデオは、Steveの元に幼なじみの高橋幸宏が訪ねるという展開。落ち着いた色調で、時々ボケも挟みながら淡々と進んでいく。曲も、双方がヴォーカルをとりつつ、仲のいい雰囲気で流れる。その仲良し雰囲気がよく、個人的にも好きなクリップである。

「KAPPA」くじら
なんとも不思議なバンドである。昭和の(この頃はまだ昭和だったが)懐かしい雰囲気を漂わせつつ、それでいてラジカルな詞がありながら、牧歌的なサウンドと、つかみ所のない感じである。ビデオ中、メンバーがタートルネックを着ていて当時はダサイ感じだなと思っていたが、数年を経てタートルネックが復権する。先見の明なのか、たまたまなのか。

「潮時・ポーカーフェイス」バブルガムブラザーズ
いい曲である。どこかのマンションのエレベータをジャックした二人が、知らずに乗り込んでくる住人をいじりながらビデオは進んでいく。そのおちゃらけた内容はともかく、ミディアムテンポのいい曲である。トムさんは今でもテレビで見かけるが、相方のコーンさんは何をしているのだろうか。再結成の話もあったように思うが。

「蝋人形の館」聖飢魔II
大御所登場である。ヘビメタブームも一段落し、J-POPはバンドブームへと移るのだが、出てきたときからなんかおかしいなとは思っていた。見てくれは他のバンドに違わず威圧的で仰々しい感じだが、どこかコミカルな一面が垣間見えていた。で、あれである。ビデオでも、冒頭でその一面が窺える。しかしサウンドは本格派。妹が信者であったため、私もデーモン小暮の敬称は閣下である。NOKKOがゲスト出演しているのは周知の通り。

「Crime of Love」浜田麻里
浜田麻里の最高傑作ではないだろうかと思う。シャウトが響くラブバラードは他に例を見ないだろう。実にしっとりと激しく聴かせてくれる。ビデオは、「Blue Revolution」のついでに撮ったのか、色調が似ている。曲がよすぎてどんな映像を当てても薄れてしまうだろう。

バックナンバーズ・神よ

大阪のホテルで仕事をしていたときだった。キリスト教挙式場の裏手にあるビデオ室には、カメラオペレーターの私と二人の牧師がいた。若い牧師が、といっても私の父より少し若いくらいだが、カゼで調子が悪いと年配の牧師に話し掛けた。するとどうだろう、その年配の牧師は若い牧師に向かって手を翳して祈り始めたではないか。私はなぜか見て見ぬふりをしてヘッドフォンを掛けた。
結論から言えば、この世に神など存在しない。これは厳然たる事実である。神の教えと呼ばれるものも、人々が共存して生活していくために不可欠なモラルに過ぎない。それを人々に広めるため、時の文明は神という高次な存在を創り上げ、あたかもそこからの教えというようにそのモラルを広めていったのだ。
先の牧師のカゼが治ったとして、それは彼の身体の中でウイルスが退治されたことによるものであって、決して神が治したものではない。だが彼は、そうは思わないだろう。彼は神の存在を信じているからだ。
信仰は自由である。しかし、人間はいつまでいるはずのない神の存在を信じ続けるのだろうか。金儲けの新興宗教に騙され、何百何千万という金を取られた人もいる。私は同情などしない。神の存在を信じたお前がバカなのだと。
かくいう私が神に代わって感謝するのは、この地球上の生命である。それは食事のときであり、仕事であり、日々の生活に大きく関わっているこれらの生命達の存在を無視するわけにはいかない。現代は、それがあまりにもないがしろにされ過ぎている。平気で人を殺し、物を粗末にし、破壊する。
神を頼っている限り、人類に未来はない。誰からも教えられることなく、自分で考えて行動することこそが、未来に生き残る生命体に課せられた命題である。新しいミレニアムに、希望の光を信じて。
(みかつう99年12月号)

MTJ #6

「TuTu」ポータブルロック
アイドルをひきずっている(失礼)野宮真貴嬢が見られる貴重なクリップ。一応ドラマ仕立てで話は進むが、そこはミュージシャン、過度の期待は慎もう。スタジオの隅で片手間に撮ったようなあまり凝ってないビデオだが、リズムに合わせたカッティングが心地いい。

「Runaway Girl」ROGUE
どこのバンドでもヴォーカルは強烈な個性を持っているものである。それはルックスであり、ファッションであり、言動であったりするが、ROGUEの奥野敦士は、髪型(?)であった。別にモヒカンとかそういうのではない。普通のオールバックなのだが、サイドの髪が少し長い。で、この曲のサビの部分になると、彼は上半身を小刻みに前後に動かしてシャウトするのだが、そのときにサイドの髪がばらけて、顔に覆いかぶさるのである。それがなんともいえない不気味さというか、操り人形のような妙なエグみを見る者に与えてくれる。そんなことしか評価されないROGUEって・・・

「My Revolution」渡辺美里
小室哲哉、入魂の名作である。この一曲がある限り、私は全てを許す。渡辺美里の伸びやかなヴォーカルをバックに、都会に生きる若者のカットが延々と流れる。君たちの革命は、君たちの中にある。日本のスタンダードナンバーといってももはや過言ではないだろう。名曲である。

「Freeze Moon」尾崎豊
尾崎豊が、絵の具でどろどろになっている。それがだんだん取れてきて、最後にきれいな尾崎豊になる。単純に逆回しにしてあるだけだが、効果的で面白く仕上がっている。絵の具が全部取れたときには、ちょっとした爽快感があったりする。曲は重いが。

「6月の雨」白浜久
こっちはもっと重い曲である。後にARBに参加する白浜久だが、若者の妊娠中絶をテーマにした歌である。実際、発売直前になってクレームがあったそうだ。女子高生を主人公に、援助交際の原点みたいなストーリーが展開する。当時はまだ、高校生とセックスはタブーに等しかった。21世紀になって、それも当たり前になってしまった。いいやらわるいやら。

「Don't Stop Passengers」PINK
ビデオドラッグのような作品である。PINKは、大沢誉志幸のバックバンドという触れ込みで売り出された。バックバンドというと、どうも大沢誉志幸の下で修行したようなイメージがあるが、決してそうではない。たぶん安全地帯の影響があったのだろう。音の本質をさておいて、そういう上辺だけしか触れずに宣伝するのは、実に不愉快である。ギタリスト二人は既に他界されたそうだが、他のメンバーは現役である。

西部警察

村川透監督はよしとして、撮影が仙元誠三というのには驚いた。それもそのはず、番組を観ながらひでえカメラと思っていたからだ。F1レーサーがラリーカーに乗っても速く走れないということか。
TVRは個人的にも大好きな車なので、乗り回してくれるのは嬉しいが、やはり浮いている。おまけにさすがのスタントレーサーも乗れてない。テールずるずる。
舘ひろしはさすがの存在感だが、他の連中が全然わからない。徳重さえもわからない。神田正輝は邪道な両手マフィア撃ちを華麗に決めてくれた。銃をわかっている俳優は芝居が違う。そこで徳重、君はもっと練習しろ。下手くそ。
その銃だが、もう少し特徴付けてくれてもよかった気がする。前作の団長のショットガンのように、画的に面白いものがなかった。せっかく西部警察なのだから、プロップガンは凝って欲しかった。
シリーズ化はどうなんだろうか。このままでは正直不安である。

魔境伝説アクロバンチ

”スタジオNO.1と金田伊功”と聞けば、チャンネルを合わせないアニメファンはいない。もちろん、当時の私もその一人だった。
あのブライガーには及ばないものの、金田節全開のオープニングは殿堂ものである。パースや骨格を全く無視した人物作画が、いざアニメーションとなるといきいきと動き出す。
一番弟子と言われた越智一裕が初演出を手掛けたのもこの作品である。師匠に言わせればまだまだの出来だったそうだが、当時としては大抜擢である。
また、いのまたむつみが作画監督、キャラクターデザインとして初めてクレジットされるのもこの作品である。既に葦プロ作品で頭角を現し、人気も出てきたときであった。
リアルロボット全盛の時代、確かに作画に関しては話題性が高かったが、ストーリーの完成度が低かったため、やはりこの作品も低迷した。放映時間も3度変更(関東地区)され、視聴率という魔境で番組もさまよったようだ。

MTJ#5

「ため息のマイナーコード」The東南西北
高校生にしてソニーオーディションでグランプリを獲ってしまったバンド。オーディションとしてはこれ以上ないくらい大規模であるから、関係者はヒヤヒヤしていたことだろう。しかしそこはグランプリを獲っただけの腕はあり、数々のスマッシュヒットを飛ばした。ビデオもそのまま、制服姿でメンバーが登場し、青春の1ページみたいな感じに仕上がっている。

「かっちょいい!」米米クラブ
トムトムクラブに音が似ているなと思ったら、本当にそこからきているらしい。今や伝説となったビッグファンクバンドのデビューである。ジェームズ小野田はいきなり強烈である。ビデオでは誘拐犯を演じ、カールスモーキー石井と張り合う。博多めぐみはマジで女だと思っていた。ビデオもステージも、そしてメンバーも、なんてファンキーなバンドだろうか。

わっ、ミュートマやw

「遅咲きガール」戸川純
元祖不思議少女である。ビデオは、いろいろなコスプレが楽し(?)める。この曲と「好き好き大好き」「さよならをおしえて」は、ワンセットで撮影されたようだ。しかし戸川純は、椎名林檎とどこかしら共通点があるような気がしてならない。歌詞に音読ではわからない熟語を多用し、ヤプーズ以降は右翼的色彩を濃くした。

「NO!NEWYORK」BOΦWY
BOΦWYに初めて触れた曲である。レコーディング先のベルリンの映像がフィーチャーされている。まだメンバーはやんちゃな感じがして、トゲトゲしさがあった。後に、日本を席巻するビッグアーティストとなり、現在活躍しているビジュアル系ミュージシャンの大半に強烈な影響を与えることになる。GRAYなんかはもうコピーバンドといってもいいかもしれない。

「HelloHello」LOOK
前作のスローな曲より一転、バカがつくほどポップな曲である。LOOKは精力的にビデオを制作、以降もドラマ仕立てで見応えのある作品を出し続けて行く。たぶん、このビデオに出ているクラシック歌手は、タレントとしてブレイクする前の森公美子ではないかと思う。

銀河旋風ブライガー

”夜空の星が輝く影で、悪(ワル)の笑いがこだまする
星から星へ泣く人の、涙背負って宇宙の始末
銀河旋風ブライガー、お呼びとあらば即参上!”
柴田秀勝の口上であの伝説のオープニングは始まる。ブライガーは、オープニングが全てと言っても過言ではないだろう。
銀河旋風ブライガーは、必殺シリーズをモチーフとし、J9シリーズ三部作の最初にあたる。オープニングに加えて、軽妙洒脱なセリフが話題を呼んだ。塩沢兼人が熱血キャラをあてるのも珍しい。
以前、BSアニメ夜話で銀河鉄道999の話をしていたにもかかわらず、なぜかブライガーのOPが流れた。金田伊功の話に言及して流れたわけだが、コマ送りして動きや作画のおかしさを確かめてみたり、スリーナインそっちのけでかなり長い間話が続いていた。たぶん、テレビの前で相槌を打っていたマニアも多かったはずだ。
金田氏は本編には一切関わっていない(はず)だが、DVD-BOXのジャケットを書き下ろすなど、ブライガーと氏とは切り離せない間柄にある。
ゲームでブライガーを知った人も多いと聞く。ロボットアニメとしてはいささか物足りないところもあるが、J9シリーズはメカよりもキャラが魅力なので、DVDやCSなど、名前を見かけたらご覧いただきたい。もちろん、金田伊功作画演出のオープニングは必見である。