パート2がオリジナルを上回ることはあり得ない。あり得ないが、このドラマは続編としてオリジナルを上回る完成度を持った。
オープニングからしてそれを物語っている。35mmフィルムで撮影された、7人の登場人物の後姿。これから起こる新たな物語を予感させる。私は放送当時芸術系の大学にいたのだが、あのオープニングすごいなという話題で持ちきりであった。
前作では持て余した感のあるキャラクターだったが、続編ということで関係説明が省けた分、7人が完璧にシナリオの上を転がった。
続編ならではの前作パロディ(コインランドリーのチンピラ)や、今はもう廃止されてしまった川崎-木更津間のフェリーでのロケ。前作は川だったが、今度は東京湾を跨いだ恋物語が展開される。
鎌田氏は、続編など全く作る気はなかったらしい。ところが、視聴者からの素朴な質問に答える形で、続編の制作が決定したそうだ。
結果として、男女7人シリーズは後にトレンディドラマという若者の恋愛ドラマのパイオニアとなり、良くも悪くもいろんなテレビドラマが制作されていった。
やはり、上っ面だけのドラマは消え、シナリオの優れた作品は後世に残る。たった1クールの放送で、これだけ人々の心に残っているテレビドラマは、他にないだろう。
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男女7人夏物語
携帯はおろか、ポケベルすらなかった時代のテレビドラマである。放送されてからもう20年近くになる。そして20年近く経ってもなお、人気の高いテレビドラマである。
連続ドラマとしては初主演となった明石家さんま、後に伴侶となる大竹しのぶを中心に、奥田瑛二、片岡鶴太郎、池上季美子、賀来千香子、小川みどりが出演している。
日本屈指の名脚本家・鎌田敏夫が描く7人の恋物語は、決してドロドロせず、20代後半から30代にかけての大人の恋をさらっと描き切る。
キャラクターの書き分けが実に明瞭で、教科書としても充分通用する見事な脚本である。
お笑い芸人が主演を張るドラマは今ではそう珍しくないが、芸人がただお笑いだけやっているのではないということを世間に知らしめた。
橋や川を恋愛のメタファーとして引用し、生活感のある東京像は地方の視聴者にもわかりやすかった。ただ、さすがの鎌田脚本をもってしてもキャラクターを一度に転がすのは6人が限界だろう。小川みどりの持て余し方がそれを示唆している。
久々にこのドラマを観て思ったが、携帯は我々の生活をかなりのレベルで激変させてくれた。携帯時代の今、こんなテレビドラマはたぶん作れないだろう。もちろん、今でも優れたテレビドラマは作れるが、携帯時代を過ごした人間に、それは任せるとしよう。